麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
そしてーーーー。
「モモネリアが笑うと、俺も幸せだ....」
その言葉で、モモネリアにまた記憶の雨が降りそそぐ。
そう、だ。あの日、母もそう言って....たんだわ。
あの日の記憶の最後、母の唇が刻んだ言葉を今思い出した。
「モモネリアが笑うと、お母さん幸せよ」
どっと涙腺がゆるんで、とめどなく涙が溢れる。
大泣きしながら果物を食べるモモネリアを、それでもリードネストは優しく受け止めてくれた。
寂しくて泣いているのか問われ、モモネリアは首を横に振る。すると、「そうか...」と、大きな手でそっと頭を撫でてくれた。
攫ってきた本人としては、自分が泣かせているのかもしれないと複雑に感じていたかもしれないが。
モモネリア自身は、今までの心の重荷が一気に軽くなった心地で。
閉じ込められていた感情が、解放された感覚で。
孤独で重かった身体が、羽がはえたようにふわふわして。
それで、泣いていた。
なんだか、生まれ変われそうな気がしたのだ。