麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「.....はぁ。......モモネリア。会いたい」
例え、モモネリアに愛されなくても、俺はモモネリアを愛すると決めた。モモネリアが側にいてくれるなら、それでも構わないと。
それなのに....いつのまに俺はこんなに貪欲になったんだ?
少しでも、モモネリアが心を許してくれた空気を感じたら....もっと、もっと、と欲が抑えられなくなった。
もっと笑ってほしくて、触れたくて、甘えてほしくなった。
モモネリアに嫌われたくない。
必要とされたい。
できれば......愛されたい。
もう誤魔化せなくて、リードネストはまた大きくため息を吐く。
「あぁ.....モモネリア。俺は.....どうすればいいんだ」
勝手に攫ってきたうえに、自分と同じように愛してくれ、などと言えるわけもない。そんなこと絶対にしてはダメだ。
それなのに、理性ではモモネリアを慮り、本能ではモモネリアの愛を乞うている。
なんと滑稽なことかーー。
会える確率など奇跡に近い愛しい番に、会えた自分はものすごく幸運だ。
だが、会えたら今度は愛を乞い、自分と同じ愛が返ってこないことに、泣き叫びたくなるほど悲しみを覚える。
獣のようなコントロールのできない本能をもてあまして、苦しさから息の仕方もままならず、リードネストは初めて涙を一筋流していた。
女に興味もなく、愛することなど知らなかった。
そんな自分が番の愛を乞うて、泣く日が来るなど想像もしなかったーー。
リードネストは、誰もいない自室で涙が収まるまで、しばらくひきこもっていた。
コンコン!
「.....なんだ?」
すっかり涙も落ち着いた頃、家令のカーヴィンがドアをノックした。 返事をするとすぐにドアが開かれ、カーヴィンが入ってくる。
「旦那様、お客様です」
「....誰だ?今日は来客の予定はなかったはずだが」
「....リンツ・マクラーヴィン様がお越しです。旦那様に、お会いしたいと。どうやらお急ぎだったらしく、先触れが出せなかったと仰っております。いかが致しましょうか」
「リンツが?....わかった。すぐいく」
リードネストは、その名前を聞いてすぐに自室から出て、邸の玄関に向かった。