麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
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 リードネストは、突然訪ねてきたリンツ・マクラーヴィンとともに、庭園に出ていた。


 さっさと要件を聞いて帰そうと思っていたが、リンツ本人がリードネストの家の庭を見たいと言い出して、気は進まなかったが断りきれず案内したのだ。


 リンツが訪ねてきた理由こそ王から預かった大切な仕事について話を詰めるためだが、早々に仕事を終えたら、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら、庭園を見せろと言ってきた。

 リードネストは、ため息を吐いた。


 どうせ、最近番が現れたリードネストのことをからかうためだろうとわかっていたからだ。リードネストが女性に興味がないのは、邸の者はもちろん、王城で働く者たちにも周知の事実だ。


 だが、そんなリードネストに、つい最近やっと愛する番が見つかったようだと、話題になっているらしい。


 リードネストとよく仕事をする仲のリンツはちょうどその噂を聞き、仕事のついでにひやかしてやろうと企んだ。


 久しぶりに来たら、邸の雰囲気も以前とガラッと変わっており、玄関に入る時ちらっと見えた庭に関してはさらに驚いたため、リンツはカーヴィンに尋ねた。


 すると、リードネストは番が可愛すぎて庭にガゼボを作ったり、番の好きな花をたくさん植えて手入れしていることを知り、かなり尽くしていることがうかがえた。

 リードネストのあの仏頂面を崩せるかもしれない、とリンツのイタズラ心がむくむくわきあがる。




「すごいじゃないの。こんなに綺麗に手入れして。前は、見られればそれでいいって、必要最低限の花しか植えてなかったのに。あんなガゼボまで作って....」




 何故かリードネストの腕に絡みついてジロジロ庭を眺めるリンツに内心苛立ちながら、リンツのしたいようにさせる。気が済んだら、早く帰ってもらうためだ。



 .....リンツが帰ったら、モモネリアを久しぶりに食事に誘おうか。

 ......会わないのも、俺の方が限界だ。....会いたい、モモネリア。



 心ここにあらずという空気を察知したのだろう。リンツがむぅとむくれて、さらに身体を押し付けてきた。
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