麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
この世は、科学の発展に多いに貢献している人間、武力に優れた獣人、魔法を操る魔法使い、不思議な力をもつドワーフの四種族が生きている。
ここ、トーリェンシア国には主に獣人が暮らし、時折獣人の『番』である人間を見かけるくらいである。
俺は一ヶ月前王命を受け、仕事でモモネリアの暮らしていたミネトーネ国に滞在していた。
ミネトーネ国は、トーリェンシア国の隣に位置し、気候もよく似ていた。
暑くなったり、寒くなったり、その日によって気温が全く異なる。
モモネリアに出会った日は比較的あたたかく、空いた時間で俺は外を散歩していた。
そして、俺にとって唯一無二の番、モモネリアに出会ったのだ。
あの日、俺は確かにモモネリアを攫った。
獣人だから、とか、本能だから、とかそんなものじゃない。
モモネリアを一目見た瞬間、自分のものにしたいと感じたのは確かだが、獣人とて理性はきちんと持ち合わせている。
していいことと悪いことくらいの分別はある。
本来なら、きちんと手順を踏んで、求婚すべきところであるし、言い訳でも何でもなく、あの状況でなければ俺もそうしたかった。
それなのに、何故有無を言わさず、モモネリアを攫ったのかーー。
◇