麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

 あの日、モモネリアをみた俺は、歓喜する己の本能と共に、このまま帰しては彼女を失うかもしれない、と強く感じた。

 番を守らなければならない、という防衛本能とでも言うのだろうか。

 モモネリア自身は、無意識だったのかもしれないが、あの日の彼女は普通ではなかった。

 初対面の俺が言うのもおかしいとわかっているが、番だからこそ感じるものがあったのだ。



 あの日の彼女は何か心にドス黒いものを抱えていて、この世を諦めているような....そんな仄暗い空気を纏っていた。

 目を離したら消えてしまいそうな....儚い空気だった。


 彼女を救いたい。
 彼女を守りたい。
 そして、俺が笑顔にしてあげたい。



 そう思って....気づいたら身体が動いていた。
 してはいけないことをした自覚はある。
 でも、後悔はしていなかった。

 きっと普通に話しかけても、彼女は家に帰っていただろう。

 そうすると、俺は彼女の側を離れなければならない。
 彼女をひとりにしてしまう。

 どうしても、今は彼女の側を片時も離れてはいけないと思ったのだ。

 例え彼女に嫌われても、彼女が生きていてくれるならそれでいい。

 彼女に愛されなくても、俺は彼女だけを愛し続ける。

 どんなことがあっても俺が彼女を支えたい。



 そのために.....俺は彼女を攫ったーー。

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