麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「ちょっと。聞いてる?....もう、どうせ愛しい番のことでも考えてたんでしょう。全く。....それで?どんな子なの?その.....モモネリアって子は」
今まで無表情を貫いていたリードネストが、明らかにムッとして鋭くリンツを睨みながら低い声を発する。
「.....俺のモモネリアを勝手に名前で呼ぶな」
リンツは、呆れ顔になりゆるゆると首を振る。
「....わかったわよ。そんな怖い顔で怒らないでよ。独占欲の強い男は嫌われるわよ」
「.....ふん」
嫌われる、と言われて一瞬狼狽えたのが手に取るようにわかって、リンツはさらにニヤニヤと笑みを深める。
「そんなに、大切なの?番ちゃんが」
「.....あぁ。もうモモネリアなしでは生きていけない。俺は、あんなに可憐で繊細で美しい生き物を知らない。彼女は、俺が大切に....大切に守っていきたい。こんな気持ちを教えてくれたことにも感謝してもしきれないよ」
その瞬間、リードネストがふんわり甘く笑った。
モモネリアに見せる、あの柔らかい笑顔だ。
リンツは、目を瞬かせる。
「.....へぇ。あなたのそんな表情が見られるとはね。.....まぁ、あれね。おめでとう、とでも言っておきましょうか。せいぜい嫉妬心と独占欲をむき出しにしすぎて、愛想を尽かされないようにね」
ふふん、と意味ありげに笑って見せたリンツに、リードネストは何か言おうと口を開きかけた。
その時ーー。
ガサッ。
後ろで何か小さな音がして、リードネストは振り返った。そこに、リードネストが見間違うはずのない背中が遠ざかっていくのが見えたのだ。
「.......モモネリア?」
リンツはその声に、リードネストの顔を見上げる。
「....なに?どうしたの?」
「.....モモネリア!.......泣いて、いるのか?.....離せ!追いかける」
「....えっ!?ちょっ.....なに!?どうしたのよーー!」
リードネストは、いきなりリンツの腕をすごい力で振り払い、その問いかけにも答えずに一目散に走っていく。リンツは、ただ呆然とその後ろ姿を見送っていた。