麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
6. 嫉妬とその先の真実
リードネストは、見えなくなったモモネリアの匂いを頼りに追いかけていた。すると、モモネリアは真っ直ぐ自分の部屋に戻ったようだ。
.......ここだな。モモネリア....泣いていた。開けてくれるだろうか。
リードネストは、深呼吸をしてから意を決してドアをノックする。
「......はい」
少し間があいてから、小さく返事があった。
心なしか、声が掠れている気がする。
「.....俺だ。リードだ。....入ってもいいか?」
「....リード!?....ちょっと、まって」
バタバタと足音が聞こえて、ゆっくりドアが開かれた。少し開いた隙間から、モモネリアが上目遣いでのぞいてくる。
....か、かわいい。可愛すぎる。
久しぶりに会えた喜びと、そのなんとも愛らしい庇護欲をかきたてる仕草に、リードネストの胸がぎゅんと掴まれる。無意識に尻尾がブンブン揺れていた。
「....ど、うぞ」
少し目が赤い。やはり、泣いていたようだ。
そして、唇をツンと突き出し、何故だか拗ねている空気も感じる。
気のせいだろうか。
「.....失礼する」
パタンと静かに音をたててドアが閉まると、モモネリアは俯きがちに視線を伏せ、リードネストをソファへと案内した。
クリーム色の革張りのソファは、控えめにレースの柄が入っており、モモネリアの好みに合わせてリードネストが用意したものだ。
モモネリアはベルを鳴らして侍女のハルカを呼び、紅茶を用意するよう頼んだ。温かい紅茶を淹れ主人たちの前に丁寧に置くと、ハルカは静かに退室する。
向かい合わせに座った二人の間に、重苦しい沈黙が流れる。先に口を開いたのは、リードネストだった。
「......久しぶり、だな。会えて、嬉しい」
明らかにぎこちなくそんなことを告げるリードネストに、モモネリアはまた泣きそうになった。
......なんで、そんな固い顔するの?
......この間まで、もっと柔らかく笑ってくれてたのに。
.......さっきは、あの女性にも笑ってたのに。
「.......そうね」
とても冷たい声になったことに自分でも驚いて、思わず口元に手をあてる。リードネストは、眉間に皺を寄せ、傷ついた表情だ。
それでも、リードネストはモモネリアに話しかける。
「......その、さっき.....庭にいたか?」
「.....えぇ」
モモネリアはなんと返事をするべきか悩んだが、嘘をつくわけにもいかず、そのまま返事をした。
「....そうか。やはりあれはモモネリアだったんだな。....俺の見間違いじゃなければ、泣いていたか?」
「.........」
「何かあった、のか?もし悲しいことがあったなら教えてほしい。お前のことは、俺が守る。何でもする。モモネリアには、笑っていてほしいんだ。....何があった?」
返事がないことを肯定と受け取ったのだろう。
リードネストは、そのまま畳み掛けるように言い募る。
そんな優しい言葉をかけられたら、もっと惨めになる。
.....じゃぁ、どうしてあの女の人と腕を組んでいたの?
......私に笑っていてほしいなら、私だけ見てよ。
.......他の女性に笑いかけないで。
また真っ黒い感情がドクドクと溢れ出してきて、蓋ができない。思わず、モモネリアはキツイ口調で問いただしていた。
「......じゃぁ、あの女性はなに?どうして、あんなに寄り添っていたの?私に笑っていてほしいなら、そんなこと....しないでよ!」