麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
 



 ハッと気づいた時には、遅かった。全て、ハッキリと、リードネストの耳に届いてしまった。モモネリアは、青ざめて、アタフタと慌てふためく。

 そんなモモネリアを見て、リードネストはポカンと口を開けたままだ。しばらくして、リードネストの口がゆっくり動く。




「.....もしかして、泣いていたのは.....俺が、リンツと一緒にいたから、か?」



「....うぅっ」



 言い逃れできない状況に、言葉に詰まるモモネリア。
 そんな様子をみて、リードネストは徐々に喜びの感情をあらわにする。


 三角耳は嬉しげにピクピクと揺れ、尻尾はバサバサ音がするほどはちきれんばかりに振られている。

 そんなリードネストをみて、怒っていた気持ちが萎んできて、モモネリアは小さな声で力無く答えた。



「.....そう、なの。ごめんなさい。こんな醜い、感情.....。私のこと、嫌になった?」




「....どうして嫌になるんだ?俺がモモネリアのことを嫌になるわけがないだろう」



 心底わからない、とでもいう風にリードネストは首を傾げる。



「.....だって、わたし.....」




 モゴモゴと口籠もるモモネリアに、もう一度リードネストは力強く告げる。




「例えどんなことがあっても、何をされても、俺がモモネリアを嫌うことなど絶対にない。俺は、モモネリアが好きで、誰よりも愛しているんだ。......俺の勘違いでなければ....嫉妬、してくれたんだよな?」



 改めて確認されて、羞恥にかられる。躊躇いがちにコクンと頷けば、リードネストはぱぁっと表情を明るくした。


 しばらく余韻に浸るように、噛み締めるように拳を胸にあて目を閉じていたリードネストだったが、気が済んだのか目を開き「コホン」と小さく咳払いをしてから再び話し始める。




「.....さっき庭で一緒にいたのは、リンツ・マクラーヴィン。俺の仕事相手で.....男だ」



 モモネリアの時が止まった。




「.........え?........男、のひと?」



 たっぷり間をおいて、信じられないという風に聞き直す。リードネストが真剣な表情で大きく首を縦に振り、コクンと頷く。
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