麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「........えっと。.......知らなかった、の」


「.....だろうな。......なぁ、モモネリアは......少しは俺を好意的に見てくれているんだろうか。嫌われては、いないんだよな?」


 リードネストの嬉しげだった表情が少し曇って、困った顔になる。

「......っっ!!嫌い、なわけないっ!!」


 咄嗟に、口をついて出た強い否定に、リードネストも、モモネリア自身も驚いている。

「.....じゃぁ、俺をどう思ってるんだ?」


 不安に揺れる瞳で、躊躇いながら問うリードネスト。


 .....私は....リードを、どう思っているの?

 ......喜んで、ほしい。支えてあげたい。大切にしたい。

 .......ずっと、そばに居てほしい。

 ......そんなふうに思ったのは、リードが初めて。



 今までモモネリアには何も求めず、愛情を注ぎ続けてくれていたリードネストが、初めてモモネリアに返事を求めてくれている。

 そんなことに、一切重荷を感じず、むしろ愛してくれているから、モモネリアを求めてくれているから、故の行動なのだと嬉しく思っている。

 それに気づいた瞬間、モモネリアにとってその気持ちこそが答えなのだと感じた。



 ......私、リードに愛されて、求められて、嬉しく思っている。

 .......私は、リードが好き、なんだわ。


 胸にストンとハマったピースは、今までぽっかり空いていた心の穴を埋めてくれた気がした。


「......私は....私は、リードが......好き」


 気持ちを問うてきたはずのリードが、目を見開き固まって、何の反応も見せない。気持ちを明確に意識した今、その顔もさらに可愛く感じて、モモネリアは再度伝えた。


「......リード、好きよ」

 その言葉で、我に返ったリードネストは、ぶわっと涙を溢れさせた。

 今度は、モモネリアが固まる。

 リードネストが泣いたところなど、見たことがない。



「すっ、すまない。情けない、が......嬉しくて......止まらない。モモネリアに、そう言ってもらえたことが、奇跡のようで。....モモネリア。.....俺の唯一無二の番。愛する人。......ありがとう、俺もお前を.....お前だけを愛している」


 端正な顔を歪ませて、喜びの涙を流すリードネストは、とても美しかった。


 ......こんな綺麗な泣き顔見たことないなぁ。


 .......与えてもらうばかりでなくて、私もこの人に幸せをたくさんあげたい。


 .......守ってあげたい。


 モモネリアは自分のハンカチで、リードネストの涙を優しく拭う。リードネストが涙で赤くなった目を向け、モモネリアを見つめる。

 二人を幸せな空気が包んで、どちらからともなく微笑み合ったーー。
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