世間ではぐうたら令嬢ですが、実は拳姫と戦場で呼ばれております。
第28話 リリスの覚醒
――防衛機構、展開完了。
無機質なアナウンスと共に、地下空間に響く金属音が聞こえてきた。
ゆっくりと壁の奥から出現したのは、鋼の殻に包まれた蜘蛛のような機体。鋭利な脚が床を刻み、魔力を帯びた光線兵器が起動音を立て始めているのを瞬時に理解した。
「……こいつらが、防衛兵器か」
ゼロスが槍を構え、前へ出る。
その背に、レイリアが拳を握りしめながら立っていた。
「魔力を封じる結界に適応した兵器……王国がここまでやるとは思わなかったよ。一発ぶん殴っておけばよかったかなーあの王子様」
そのように言いながら、名前すら既に忘れている嘗ての婚約者を思い出すレイリア。
ぼそっと呟きながら答える彼女の姿に対し、ラグザールはククっと笑い、そして同時に獣じみた笑みが浮かぶ。
「ゼイディス、レイリアのサポートは任せた。ゼロス、こっちはこっちで派手にやるぞ」
「ああ、わかった」
ゼロスもラグザールの言葉にうなずき、そして偶然なのか二人の息が合う。。
次の瞬間、ゼロスが突進する前衛として鋼の脚を捌き、ラグザールは背後から拳で破壊を叩き込む。
一方、ゼイディスはレイリアの横で、冷静に結界の挙動を観察していた。
「……この防衛機構、リリスの魔力で稼働してるのは確かです……でも、それなら――」
「わかった、なら、私が止める」
レイリアの声に、ゼイディスが驚いたように振り返る。
「でもレイリア様、今のあなた魔力が――」
「関係ないよ。ちょっと無理するだけだから……無理し多分寝れば大丈夫」
息を静かに字吐きながら、レイリアはゆっくりとリリスの浮かぶ中央の結晶へと歩き出す。
「リリスを止めるならば、丁度私の拳がある。この拳で何とか止めてみせる」
レイリアは何度も息を吸いながらその一歩一歩歩く。
同時に彼女の意志が宿るかのように。
光を放つ結晶の下で、リリスはまだ目を閉じていた。
しかし、眉が僅かに動き、指先が小さく痙攣する。
(届いてる……さっきの声、ちゃんと……)
レイリアが結晶の前に立ち、指を鳴らしながら拳を作り、そして構えた。
「……ごめんね、リリス」
その言葉と共に、渾身の拳が結晶の中心へと叩き込まれた。
――カンッ!!
音が、乾いて響く感覚。
魔力を帯びた結晶は微かにひび割れ、その周囲の魔法陣にノイズが走る。
「今だ、ゼイディス!内部干渉をお願い!」
「っ……わかりました!今、魔術式を反転させます!」
ゼイディスが指先から放った雷がひび割れに流れ込み、内部の回路を焼き切る。
結界が音を立てて崩れ始め――その瞬間だった。
周囲の空気が、一瞬にして震え、空気と言う存在が変わる。
重く、圧倒的な【何か】が、地下全体に広がっていく。風が生まれ、壁に刻まれた封印が一つ、また一つと砕け落ちていく。
「――っ、これは……!」
レイリアが目を見開いた。
そして、そのままリリスが、ゆっくりと目を開ける。
「……レイ、リア……」
その瞳に、確かな意志と言うモノがが戻っていた。
瞬間、リリスの体がゆっくりと宙から降りていくと同時に、レイリアが近づく。
地面に降り立った彼女は変わらない、可愛らしい少女だった。
「あ……姉上の魔力がちゃんと戻っている……」
ゼイディス静かにその言葉を口にした後、安心したかのように笑っていた。
一方、彼女は笑いながらレイリアに視線を向ける。
「……ずっと、眠ってたみたい……変な夢だった……でも、もう大丈夫」
「うん、大丈夫ならよかったよ」
リリスの声は穏やかに答えており、それに対してレイリアは安心したかのように頷いた。
その一言の直後――無人兵器の一体が、目の前で閃光と共に消し飛んだ。
「なっ……!?」
「……え?」
誰もが、その瞬間を見逃した。
ただ、リリスが手をかざしただけだった。
そして次の瞬間、残りの兵器全てが――氷結し、砕けた。
「これで、静かになったわね」
その笑みは、どこか優しく。
けれど、冷たく、まるで何処かの女王のように凛とした姿だった。
レイリアは呆然としながら、ぽつりと漏らす。
「リリスはやっぱり強いね。父さまと母様がてこずるわけだ」
「当然でしょ?私が誰だと思ってるの」
言いながらも、その声はどこか――嬉しそうだった。
「でも、ありがとう。呼んでくれて……助かったわ。人間たちに捕まった時はどうする事も出来なかったけど……思い出したら腹が立ってきた。ぶっ潰してこようかしら?」
「姉貴、元気なのは良いがやめろ。今はそんな事はどうでも良い」
ラグザールの言う通り、今はそんな事をしている場合ではない。
弟の言葉に動きを止めるリリスの姿を、レイリアは静かに見つめた。
するとゼロスが、静かに前へ進み出る。
「とりあえず……ここから脱出しましょう。まだ上階にも敵が残っている可能性があります。彼らの手に渡った情報が外に漏れれば……あなたたちは確実に【反逆者】とされますし」
その言葉に、ラグザールとゼイディスが顔を見合わせる。
「つまり、王国を敵に回すってわけか……」
「……また厄介な話だね」
二人は顔を見合わせるが、別にそれはどうでも良い事らしい。
しかし、レイリアは違う。
「フフ……上等」
レイリアが、にっと笑った。
「こっちにはね、最強の騎士がいるから。心強いでしょ?」
その言葉に、ゼロスは一瞬戸惑う。
「れ、レイリア様……っ」
「ね、出来るよね?」
「……まぁ、頑張ります」
少し恥ずかしそうな顔をしながら答えるゼロスに対し、レイリアはにこにこと笑っていた。
そして、リリスはその二人を見つめながら、どこか感慨深そうに呟く。
「……ふぅん。そっか。レイリアが……そういう顔、するんだ」
そんな事を言いながら、リリスが笑っていたなどレイリアは知らなかった。
無機質なアナウンスと共に、地下空間に響く金属音が聞こえてきた。
ゆっくりと壁の奥から出現したのは、鋼の殻に包まれた蜘蛛のような機体。鋭利な脚が床を刻み、魔力を帯びた光線兵器が起動音を立て始めているのを瞬時に理解した。
「……こいつらが、防衛兵器か」
ゼロスが槍を構え、前へ出る。
その背に、レイリアが拳を握りしめながら立っていた。
「魔力を封じる結界に適応した兵器……王国がここまでやるとは思わなかったよ。一発ぶん殴っておけばよかったかなーあの王子様」
そのように言いながら、名前すら既に忘れている嘗ての婚約者を思い出すレイリア。
ぼそっと呟きながら答える彼女の姿に対し、ラグザールはククっと笑い、そして同時に獣じみた笑みが浮かぶ。
「ゼイディス、レイリアのサポートは任せた。ゼロス、こっちはこっちで派手にやるぞ」
「ああ、わかった」
ゼロスもラグザールの言葉にうなずき、そして偶然なのか二人の息が合う。。
次の瞬間、ゼロスが突進する前衛として鋼の脚を捌き、ラグザールは背後から拳で破壊を叩き込む。
一方、ゼイディスはレイリアの横で、冷静に結界の挙動を観察していた。
「……この防衛機構、リリスの魔力で稼働してるのは確かです……でも、それなら――」
「わかった、なら、私が止める」
レイリアの声に、ゼイディスが驚いたように振り返る。
「でもレイリア様、今のあなた魔力が――」
「関係ないよ。ちょっと無理するだけだから……無理し多分寝れば大丈夫」
息を静かに字吐きながら、レイリアはゆっくりとリリスの浮かぶ中央の結晶へと歩き出す。
「リリスを止めるならば、丁度私の拳がある。この拳で何とか止めてみせる」
レイリアは何度も息を吸いながらその一歩一歩歩く。
同時に彼女の意志が宿るかのように。
光を放つ結晶の下で、リリスはまだ目を閉じていた。
しかし、眉が僅かに動き、指先が小さく痙攣する。
(届いてる……さっきの声、ちゃんと……)
レイリアが結晶の前に立ち、指を鳴らしながら拳を作り、そして構えた。
「……ごめんね、リリス」
その言葉と共に、渾身の拳が結晶の中心へと叩き込まれた。
――カンッ!!
音が、乾いて響く感覚。
魔力を帯びた結晶は微かにひび割れ、その周囲の魔法陣にノイズが走る。
「今だ、ゼイディス!内部干渉をお願い!」
「っ……わかりました!今、魔術式を反転させます!」
ゼイディスが指先から放った雷がひび割れに流れ込み、内部の回路を焼き切る。
結界が音を立てて崩れ始め――その瞬間だった。
周囲の空気が、一瞬にして震え、空気と言う存在が変わる。
重く、圧倒的な【何か】が、地下全体に広がっていく。風が生まれ、壁に刻まれた封印が一つ、また一つと砕け落ちていく。
「――っ、これは……!」
レイリアが目を見開いた。
そして、そのままリリスが、ゆっくりと目を開ける。
「……レイ、リア……」
その瞳に、確かな意志と言うモノがが戻っていた。
瞬間、リリスの体がゆっくりと宙から降りていくと同時に、レイリアが近づく。
地面に降り立った彼女は変わらない、可愛らしい少女だった。
「あ……姉上の魔力がちゃんと戻っている……」
ゼイディス静かにその言葉を口にした後、安心したかのように笑っていた。
一方、彼女は笑いながらレイリアに視線を向ける。
「……ずっと、眠ってたみたい……変な夢だった……でも、もう大丈夫」
「うん、大丈夫ならよかったよ」
リリスの声は穏やかに答えており、それに対してレイリアは安心したかのように頷いた。
その一言の直後――無人兵器の一体が、目の前で閃光と共に消し飛んだ。
「なっ……!?」
「……え?」
誰もが、その瞬間を見逃した。
ただ、リリスが手をかざしただけだった。
そして次の瞬間、残りの兵器全てが――氷結し、砕けた。
「これで、静かになったわね」
その笑みは、どこか優しく。
けれど、冷たく、まるで何処かの女王のように凛とした姿だった。
レイリアは呆然としながら、ぽつりと漏らす。
「リリスはやっぱり強いね。父さまと母様がてこずるわけだ」
「当然でしょ?私が誰だと思ってるの」
言いながらも、その声はどこか――嬉しそうだった。
「でも、ありがとう。呼んでくれて……助かったわ。人間たちに捕まった時はどうする事も出来なかったけど……思い出したら腹が立ってきた。ぶっ潰してこようかしら?」
「姉貴、元気なのは良いがやめろ。今はそんな事はどうでも良い」
ラグザールの言う通り、今はそんな事をしている場合ではない。
弟の言葉に動きを止めるリリスの姿を、レイリアは静かに見つめた。
するとゼロスが、静かに前へ進み出る。
「とりあえず……ここから脱出しましょう。まだ上階にも敵が残っている可能性があります。彼らの手に渡った情報が外に漏れれば……あなたたちは確実に【反逆者】とされますし」
その言葉に、ラグザールとゼイディスが顔を見合わせる。
「つまり、王国を敵に回すってわけか……」
「……また厄介な話だね」
二人は顔を見合わせるが、別にそれはどうでも良い事らしい。
しかし、レイリアは違う。
「フフ……上等」
レイリアが、にっと笑った。
「こっちにはね、最強の騎士がいるから。心強いでしょ?」
その言葉に、ゼロスは一瞬戸惑う。
「れ、レイリア様……っ」
「ね、出来るよね?」
「……まぁ、頑張ります」
少し恥ずかしそうな顔をしながら答えるゼロスに対し、レイリアはにこにこと笑っていた。
そして、リリスはその二人を見つめながら、どこか感慨深そうに呟く。
「……ふぅん。そっか。レイリアが……そういう顔、するんだ」
そんな事を言いながら、リリスが笑っていたなどレイリアは知らなかった。