フィオナの運命
「おばあ様、大丈夫かしら」

ユーリが「ルシアス様からお許しをいただいたから、これから向かうよ」と言って部屋を出てから、2時間が経っていた。

馬で行けば30分ほどの距離。
既にユーリは到着して、マーサの様子を見てくれているだろう。

(牧場の様子も見て来ると言ってくださったけれど、お一人で大変だろうな)

窓から外の様子をうかがうと、どんよりと厚い雲が空を覆い、夕方にもかかわらず辺りは暗くなっていた。

(空気も湿っているし、風も強い。嵐の前触れかもしれない)

窓際で祈るように手を組み、庭園の先にそびえる門扉を見つめてひたすらユーリの帰りを待つ。

だが18時になっても、一向に帰って来る気配はなかった。

そのうちにゴロゴロと雷が鳴り出したかと思うと、一気に強い雨風が吹き荒れる。

稲妻も光り、フィオナはますます心配になった。

雲が強い風に流され、時折月明かりが射し込む。

(今夜は満月なのね)

そう思った次の瞬間、脳裏に苦しみながらもがいているメルの姿が浮かんで、フィオナはハッと息を呑んだ。

「メル!」

きっとお産が始まったのだろう。

フィオナのこれまでの経験上、どういう訳か、満月の夜に動物達のお産が始まることが多かった。

(メルが苦しんでる。助けに行かなければ)

フィオナは身を翻すと部屋の扉に駆け寄り、そっと開けて廊下の様子をうかがってから一気に駆け出した。
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