フィオナの運命
心からの哀悼
ルシアスは、時間を見つけてはフィオナの牧場に顔を出した。

祖母の葬儀を終えたフィオナは、明らかに元気がなくふさぎ込んでいる。

生まれたばかりの子馬の身体をなでながら、寂しそうな表情を浮かべるフィオナの姿に、ルシアスの胸はますます締めつけられた。

「食事は取れているか? 果物とパンを持って来た。少しでもいいから口にしてみるといい」
「ありがとうございます、王太子殿下」

そう言いつつ、フィオナの食事の手は進まない。

見る度にやせ細っていくようだった。

「そなたが元気でいなければ、牧場の馬や羊達はどうなる? 生まれたばかりの子馬だって、そなたが成長を見守ってやらなければいけないだろう?」
「……そうですね」

フィオナは、メルに寄り添って元気に走り回る子馬を見つめて、優しく微笑む。

この子馬が、今のフィオナの生きる希望だった。

「名前はもうあるのか?」
「いえ、まだです。あまり良い名が浮かばなくて」
「そうか」

ルシアスもフィオナと並んで、子馬を見つめる。

「子馬は、メスだったか?」
「はい、そうです」
「それなら……。ルナという名はどうだ?」
「ルナ、ですか?」
「ああ、月の女神の名だ。満月の夜に生を受けた命だからな。母馬のメルと、そなたの名前の最後の一文字を合わせた」

ルシアスがそう言うと、フィオナは久しぶりに心からの笑顔を浮かべた。

「はい! とても可愛らしくて良い名前だと思います」

戻ってきた子馬をなでながら、優しく「ルナ」と呼ぶ。

「元気に大きくなるのよ、ルナ」

名前をつけたことで、フィオナはますます子馬に愛おしさが増したようだった。

ルシアスが何度もフィオナの牧場に顔を出しているうちに、ルナはルシアスの愛馬のカイルとも仲良くなり、並んで駆けていく姿をよく見かけるようになる。

「ふふっ。とっても楽しそうですね、ルナとカイル」
「ああ、そうだな。そろそろ帰ろうかと近づくと、カイルは察して逃げるようになった」
「まあ、ふふふ」

フィオナにも笑顔が増え、ルシアスはホッとする。

だがそんな平穏な日々も、国王にとっては手のひらからこぼれ落ちる砂と同じ。

いよいよその時がやって来た。
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