フィオナの運命
「フィオナ」
「はい」
「どうやってもあらがえない、どんなに努力をしても覆せないことを、そなたは運命だと受け入れるか?」
「え?」

突然のルシアスの言葉に、フィオナは首をかしげる。

だがゆっくりと視線を合わせたルシアスは、真剣な眼差しでフィオナを見つめた。

フィオナはもう一度カイルとルナに目を向けると、頷いて口を開く。

「はい、受け入れます」
「それは、なぜだ?」

フィオナはルシアスに向き直り、言葉を選んだ。

「……この世に生を受けた時、それは必ずしも自分が望んだ形ではありません。人間として生まれくるもの、馬として生まれくるもの、羊やヤギ、虫や鳥や魚。様々な命があり、ひとつとして同じ命はありません。なぜ自分は人として生まれたのだろう。どうしてこの国のこの場所に、今この時代に生まれたのか、考えればキリがありません。ケガを負ったり病気になったり、悲しい別れをしたり、一人で寂しさを抱えたり、生きていると辛いことはたくさんやって来ます。それでもわたくしは、与えられた命を全うしたい。今自分ができることを、小さなことでもいいから積み重ねていきたい。会いたくても会えなくなってしまった人には祈りを捧げ、今自分のそばにいてくれる存在に心から感謝したい。そうやって、わたくしは自分で自分の命を輝かせたい。たとえ短くても、どんなに涙を流したとしても、それが自分の命だから。そしてそれを運命と呼ぶのなら、わたくしはそれを受け入れます」

静かに、けれどきっぱりとそう告げたフィオナに、ルシアスの胸は打ち震える。

(自分よりも若く、物静かで儚げな印象の女の子。だがこの子は、とてつもない強さを秘めている。辛く悲しい経験を胸に抱えながらも、現状を悲観して嘆くこともせず、一人静かに己を奮い立たせている。それに比べて、俺はなんと情けない男だろう)

ユーリから、フィオナが亡き国王の願いを叶えられなかったことを悔やんでいると聞き、どうにかしなくてはと思った。

そんな必要はないと伝えなければ。
だが、どう言えばいいのか分からない。

迷いながらここに来て、それでも決心がつかずに、いきなりフィオナに重い言葉を投げかけた。

それでもフィオナは、真っ直ぐに答えてくれたのだ。

フィオナに勇気をもらい、己の心を入れ替えるように、ルシアスは大きく息を吸った。

「フィオナ」
「はい」
「そなたに話しておきたいことがある」

受入れよう、自分の運命を。
信じよう、この子の強さを。

そして必ず自分が守ってみせる。
己の命が尽きる最後の瞬間まで。

そうルシアスは心に決め、フィオナに全てを打ち明けた。
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