フィオナの運命
「フィオナ」
「ルシアス様!」

しばらくして客間に現れたルシアスに、フィオナは驚いて立ち上がる。

「突然このように押しかけまして、申し訳ありません」
「いや、構わない。座って」
「はい、失礼いたします」

ルシアスに続いて、フィオナももう一度ソファに座る。

浅く腰掛けたルシアスは、両腕を膝に載せて正面からフィオナを見つめた。

「ユーリから聞いた。バギラに会いたいと言ったそうだな?」
「はい。不躾なのは承知しておりますが、どうしても、ひと目だけでもお会いしたいのです」
「それはなぜだ? バギラに会って、なにを聞きたい?」

黙っている訳にもいかないと、フィオナは思いきって顔を上げる。

「畏れながら、ルシアス様にかけられた呪いを解く方法を知りたいのです。どんな些細なことでも構いません。ほんの少しでも、なにかの手掛かりが掴めたらと。わたくしには、その方に頼るしか術がないのです」

真剣に訴えると、祈るような気持ちでギュッと両手を握りしめ、フィオナはひたすらルシアスの返事を待った。

しばしの沈黙のあと、ルシアスは短く答える。

「だめだ」

フィオナはすぐさま顔を上げた。

「なぜですか?」
「そなたに巫女の力を使わせる訳にはいかない」
「そんな……。お願いです、どうかお話だけでも」
「だめだと言ったはずだ」
「ルシアス様!」

涙が込み上げる。
だが泣いてはいけないと、懸命に堪えた。

うつむいて気持ちを整え、フィオナは大きく息を吸い込んでから、ルシアスを真っ直ぐ見据えた。

「承知いたしました。これ以上、国王陛下のお手を煩わせる訳にはまいりません。わたくしが一人でご挨拶にまいります。それでは陛下、わたくしはここで。失礼いたします」

立ち上がって深々とお辞儀すると、ルシアスは驚いたように口を開く。

「待て、フィオナ。一体どうするつもりだ?」

すると扉の横に控えていたユーリが、わざと大きな声でひとりごちた。

「あーあ、心配だなあ。フィオナはなんとしてでも、バギラ様を探し出して会うんだろうなあ。ルシアス様の知らないところで、バギラ様とどんな話をするんだろう? そのあとフィオナがどこかに姿を消してしまったら? あーもう、居ても立ってもいられないなあ」

うぐっとルシアスは言葉に詰まる。

「フィオナから目を離さない方がいいんじゃないかなあ。せめて一緒に話を聞いた方がいいと思うんだけど、そんなこと俺の口からは言えないか……」
「言ってるだろうが!」
「あれ、聞こえました? 失礼しました、心の声がもれてしまって。どうぞお気になさらず。じゃあ行こうか、フィオナ。門の外まで送るよ」

扉を開けてフィオナを促すユーリに、ルシアスは「待て!」と手を伸ばした。
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