フィオナの運命
「ローラ」

廊下の先を歩いていた若い侍女は、声をかけられて振り返る。

「あら、ユーリ。どうかした?」
「お客様を浴殿にご案内してくれないか?」
「ええ、もちろん」

ローラと呼ばれた侍女は、にこやかにユーリの隣にいたフィオナに笑いかけた。

「初めまして、ローラと申します」
「こちらこそ初めまして、フィオナと申します。どうぞよろしくお願いします」

するとやり取りを見ていたユーリが口を開く。

「二人とも同い年だと思うよ。17歳でしょう?」
「えっ、ほんとに?」

ローラに聞かれてフィオナは頷いた。
するとローラは、明るい笑顔を浮かべる。

「嬉しい! 王宮の使用人って、みんなうんと年上なんだもの。ユーリくらいしか同年代がいなくて、彼氏も選ぶ余地がなかったのよ」
「……はい?」

フィオナが目をしばたたかせていると、隣でユーリが「ローラ!」と慌てた。

「なにを言い出すんだ、まったく……。フィオナ、聞かなかったことにしてくれる?」
「あ、はい。分かりました」

だがローラは、ユーリが「あとは頼んだよ」と去って行くと、すぐさま続きを話し出した。

「私もユーリと同じ村の出身なの。母と幼い弟と三人で暮してたんだけど、母が病気で働けなくなってしまって。そしたらユーリが、ルシアス様に頼んでくれたの。おかげで王宮で雇ってもらえたんだけど、とにかく侍女は年配の人ばかり! だからユーリと話す時間が嬉しくて、告白されてもついOKしちゃったのよ」
「まあ、そうなのね。でもユーリさんは、とっても優しくていい人だと思うわ」
「そうなんだけど、かっこいいルシアス様の隣にいると、どうしても霞んじゃうでしょ?」
「それはだって、ルシアス様は国王陛下ですもの」
「そうなのよね。ユーリも、村人の中に紛れてればかっこいいんだろうなー」

フィオナは苦笑いする。
ローラはブツブツと愚痴をこぼしつつ、どうやらユーリにぞっこんらしかった。

「フィオナは? 恋人はいる?」
「いいえ、私の村も年配の人ばかりなの。こうして同い年の女の子と話したのなんて、きっと初めてだわ」
「そうなのね! じゃあ私たち、親友ね」
「嬉しい。どうぞよろしくね、ローラ」
「ええ」

二人で、ふふっと微笑み合った。
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