フィオナの運命
「す、すごい。なにここ? 神殿?」

案内された浴殿に、フィオナは驚いて立ち尽くす。

白い柱が並び、滝のように湯が流れている大きな浴場は、とても湯浴みをするだけの場所には見えなかった。

「ここは、ルシアス様専用の浴殿なの」
「えっ! そのような所に、私なんかが入ってはいけないでしょう?」
「ルシアス様が、フィオナをここにご案内するようにっておっしゃったみたいよ。フィオナは、王家の大切なお客様なのよ。……って、それなのに私、こんなに気安く話してはいけないわね」
「ううん、そんなことない。ローラとこうしてお話ができて、私も嬉しいもの」
「そう? それなら、二人きりの時は親友ね」
「ええ」

二人でおしゃべりしながら、フィオナは身体を湯で温める。

あまりの心地良さに、疲れが癒やされ、心がほぐれた。

「フィオナの髪って、とっても綺麗ね。サラサラで艷やかで」

ローラがフィオナの髪を洗いながら感心する。

「そんな……。いつも適当に、伸びてきたらナイフでザクって切り落としてるだけなの」
「ええ!? ちょっと、なんてことを。髪結いに切ってもらわないの?」
「髪結いなんて、私の村にはいないわ」
「そうなのね。それなら私が整えてあげる」
「ほんと? ありがとう、ローラ!」

お湯から上がるとバスローブを羽織り、ローラはフィオナの髪を布でしっかり絞ってから、はさみで整えていく。

「長さはあまり変えないでおくわね。前髪は少し短くしてもいい?」
「うん。ローラにお任せします」

誰かに髪を整えてもらえるなんてと、それだけでフィオナは嬉しくなった。

ローラはカットを終えるとはさみを置き、今度は髪をすくって編み始める。

「えっ、すごい! ローラってそんなことまでできるの?」
「なに言ってるのよ、フィオナったら。女の子ならみんなこれくらいできるでしょ?」
「私、まったくできないの」
「そうなの? じゃあフィオナが髪を編むのはこれが初めてなのね。よーし! とびきり素敵に仕上げちゃうから、楽しみにしてて」

そう言うと、ローラは楽しそうにフィオナの髪を整えていった。
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