フィオナの運命
「父上」
「おお、ルシアスか?」

謁見の間に入ると、ルシアスは玉座にいる父に声をかける。

父は見えなくなった目を閉じたまま、表情を和らげた。

「バギラが遂に探し出してくれた。シャーマンの末裔、命を操る力を持つ『生命の巫女』を」

言われてルシアスは視線を移す。

階段の下、深紅の絨毯の上にひざまずき、両手を組んで頭を下げている娘がいた。

(この娘が?)

神から大きな力を授かっているとはとても思えない。

それどころか、この状況に怯えているような小柄な娘に、ルシアスは落胆して小さくため息をつく。

「ルシアスよ、私の代わりに見届けてくれ。この巫女の力を」

国王の言葉に、娘は更に身を縮こめた。

(どうやらぬか喜びだったようだな)

ルシアスは父である国王に向き直る。

「父上。巫女は緊張のあまり、今この場で力を使うことは難しいようです。どこか静かな部屋に場所を移しても構いませんか?」
「そうか、分かった」

そう言うと国王は正面を向き、威厳のある声で娘に話しかけた。

「シャーマンの血を引く『生命の巫女』よ。我らが王家にかけられた呪いを解き、この国の次期国王となるルシアスの身を守りたまえ。そなただけが最後の希望だ。私の身を犠牲にしても良い。どうか、ルシアスだけは救ってやってほしい」

最後は一人の父親として、国王はわずかに視線を落として頭を下げる。

娘はハッと息を呑んだ。

「畏れ多いことでございます、国王陛下。わたくしごときに、そのようなことを……。わたくしは、陛下がおっしゃるような力など」

ルシアスはスッと片手を伸ばし、娘に小さく首を振る。

娘は意図が分かったようで、すぐさま口をつぐんだ。

「父上、それでは巫女を部屋に案内してまいります」
「ああ、そうだな。ユーリ、巫女をしっかりもてなすのだぞ」

階段の下に控えていたユーリが「御意」と答え、娘に近づく。

「ご案内いたします。どうぞこちらへ」
「はい、ありがとうございます。それでは国王陛下、王太子殿下。失礼させていただきます」

深々とお辞儀してから、娘はユーリに促され、大きな扉の向こうへと姿を消した。
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