フィオナの運命
フィオナの戸惑い
(どうしてこんなことに?)

ユーリと呼ばれた側近のあとについて、王宮の豪華絢爛な回廊を歩きながら、フィオナは込み上げる涙を堪える。

(普段と同じように過ごしていただけなのに、なぜいきなり王宮に連れて来られたの?)

今朝いつものように、祖母のマーサと朝食を食べてから、隣の牧場に向かった。

馬や羊やヤギを放したあと、干し草と水を入れ替えていると、子ヤギがひょこひょこと足を引きずりながら戻って来て、フィオナは驚く。

「まあ、どうしたの?」

母ヤギが心配そうに寄り添い、子ヤギの前脚をペロペロと舐めた。

「ケガをしたのね。見せて」

フィオナは片膝をついて子ヤギを抱き上げ、前脚に手を添える。

白くて細い前脚から血が流れていた。

「骨は折れていないわね。どこかで擦りむいたの? すぐに手当てをするから、いい子で少し待ってて」

干し草の上にそっと子ヤギを横たえると、フィオナは急いで外に出て、カレンデュラの花を摘んだ。

オレンジの花びらをすり潰してから、子ヤギの傷口に塗る。

その上から清潔な布を巻いた。

「これでよし。早く治りますように」

祈るように子ヤギの前脚に両手を添える。

子ヤギはじっと身体をフィオナに預けていたかと思うと、やがてピョンと跳ねるように起き上がった。

「あら、もう元気になったの? ふふっ、良かった」

フィオナが笑いかけると、子ヤギは母ヤギと一緒に元気良く外に駆け出していった。

「さてと、メルの様子を見に行かなくちゃ」

厩舎に行くと、お腹の大きな牝馬に声をかける。

「メル、具合はどう? 少しお腹を触らせてね」

首筋をなでてから、お腹の中にいる子馬の様子を、そっと手を添えて確かめた。

「動きが少なくなってきたし、位置も微妙に変わってる。もういつ生まれてもおかしくないわ」

小さく呟くと、メルに笑いかける。

「もう少しで可愛い子馬に会えるわよ。あとちょっと、がんばろうね」

メルはブルルッと鳴いて、鼻先をフィオナの手のひらにすり寄せていた。
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