フィオナの運命
「そなたは、誰か他に心に想う相手がいるのか?」

吐息が触れそうな近さに、フィオナは顔を真っ赤にしながら、言葉もなくフルフルと首を振る。

「それなら、俺のことは嫌いか?」
「そんな、まさか。滅相もありません」

フィオナは目に涙をいっぱい溜めながら、なんとか声を振り絞った。

「良かった」

ルシアスはホッとしたように笑みを浮かべると、フィオナの両手を愛おしそうに握る。

「そなたはまだ17で、今すぐ結婚は考えられないかもしれない。だが俺は、そなた以外の相手は考えられないんだ。だからそなたの気持ちをいつまでも待つ。なんとしても口説き落としてみせる」

きっぱりと言い切るルシアスに、フィオナはただ胸を詰まらせた。

「フィオナ。もしいつか俺のことを好きになったら、その時は言葉にして教えてくれるか?」
「む、無理です、そんな。畏れ多くて、とても」
「参ったな……。それだと俺は、いつまで経っても報われない」

苦笑いしてから、ルシアスは再びフィオナの瞳を真っ直ぐに見つめる。

「それなら、言葉にしなくていい。ただ想いを込めて、抱きしめてほしい。そなたの気持ちを、俺は心で受け止めるから」

優しく笑いかけられ、フィオナの瞳が涙で潤む。

フィオナは両腕を伸ばすと、ギュッとルシアスに抱きついた。

「おいおい、フィオナ。抱きしめるのは、俺を好きになった時だぞ?」
「はい」
「……え?」

ルシアスは、信じられないとばかりに動きを止める。

やがてゆっくりと、フィオナの背中に腕を回した。

抱きしめると、フィオナの温もりと共に幸せが込み上げる。

「フィオナ……愛している」

耳元でささやくと、腕の中のフィオナがそっと胸に頬を寄せてきた。

華奢なその身体からたくさんの愛情が伝わってきて、ルシアスの胸を打ち震わせる。

「必ずそなたを守り、幸せにする。フィオナ、俺と共に生きよう」
「はい、ルシアス様」

聞こえてきたフィオナの声は、ルシアスの胸を切なく締めつけた。

やがてそっと身体を起こすと、フィオナの頬に手を添えて、こぼれ落ちた涙を親指で拭う。

懸命に涙を堪えて顔を上げたフィオナがたまらなく愛おしくなり、ルシアスはゆっくりと、愛を込めてフィオナに口づけた。

フィオナはルシアスの胸元をキュッと掴んで、頬を真っ赤に染める。

「ふっ、可愛いな。大切にするから、なにも心配しなくていい」

そう言ってルシアスは、フィオナの頭を胸に抱き寄せた。

「結婚も、焦ることはない。少しずつ進めていこう」
「はい。あの、ルシアス様」
「どうした?」

顔を覗き込むと、フィオナは潤んだ目で真剣に訴えてきた。

「わたくし、どうすればいいですか? ルシアス様に相応しくなれるよう、これから精いっぱい努力いたします。まずはなにから始めればいいのでしょう?」

ルシアスは一瞬驚いてから、嬉しさに笑みをもらす。

そしてもう一度、フィオナを腕の中に抱きしめてささやいた。

「一生俺に愛されていろ。ただそれだけでいい」

更に頬を赤くして言葉を失ったフィオナを、ルシアスはいつまでも優しく抱きしめていた。
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