フィオナの運命
「おばあ様、ただいま」
「お帰り、フィオナ」

太陽が高く昇ると、フィオナはマーサが待つ小屋に戻った。

「チーズの仕込みをしたら、すぐに昼食にするわね」

そう言うと、絞りたての新鮮なヤギのミルクを鍋で温める。

レモン汁を加えて分離させると、布でこして水分を除き、ギュッと固めてから窓際に吊るした。

代わりに昨日から吊るしてあったチーズの布を外し、ハーブをまぶして形を整えてから塩を振る。

「おばあ様、今日のチーズはハーブを入れてみたの。柔らかめに仕上げたから食べやすいと思うのだけど、どうかしら?」

ベッドに半身を起こしたマーサに、フィオナはチーズを塗ったパンを差し出した。

「ありがとう、フィオナ」

マーサはゆっくりと口に運び、ひと口食べてから頬を緩める。

「ああ、美味しい」
「本当? 良かった」

フィオナも笑顔を浮かべてから、パンとチーズを味わった。

「ミルクスープも飲んでね」
「ありがとう。フィオナの作るミルクスープは、世界で一番美味しいわ」
「おばあ様ったら、大げさね」

ふふっと微笑み合った時、急に外が騒がしくなった。

「なにかしら」

フィオナは立ち上がって、小屋の扉を開ける。

次の瞬間、ザッと5、6人の兵士に取り囲まれ、フィオナは驚いて立ちすくんだ。

「国王陛下がお召しだ。そなたを王宮にお連れする」
「えっ、国王陛下が? どうしてわたくしを?」
「時間がない。急いでもらおう」
「そんな……」

戸惑っていると、「どうかしたの? フィオナ」と小屋の中からマーサの声が聞こえてきた。

「おばあ様、なんでもないの。ちょっと用事ができてしまって、留守にするわね。すぐに戻るから」
「そう。気をつけて行っておいで」

とにかくマーサに心配をかけてはいけない。

そう思い、フィオナは兵士に促されて静かに馬車に乗り込んだ。
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