フィオナの運命
「ルシアス様!」

フィオナはルシアスの顔を覗き込んだ。

「ルシアス様、お分かりになりますか?」
「……フィオナ」

弱々しく、だが確かに名を呼ばれて、フィオナは目を潤ませる。

「ルシアス様、ルシアス様!」

胸が張り裂けそうになりながら、フィオナは懸命に涙を堪えた。

「フィオナ……泣くな」
「ルシアス様……」

意識は戻ったものの苦しそうなルシアスに、フィオナは気持ちを入れ替える。

「ルシアス様、今呪いを解いてみせます」

そう言って再び水晶を握り直すフィオナに、ルシアスは小さく首を振った。

「ルシアス様?」
「……フィオナ、もう、やめるんだ。俺の身体中に、既に呪いが……染み渡っているのが分かる。最後に、そなたの顔を見られたのが……奇跡だ」
「そんな、ルシアス様! わたくしが必ず呪いを解いてみせます」
「フィオナ、言っただろう? 俺が、最後に目に焼きつけたいのは、そなたの……笑顔だと」
「ルシアス様……」

フィオナの瞳から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

ルシアスが最後の力を振り絞るようにフィオナの頬に手を伸ばすと、フィオナはその手を両手で握り返し、更に涙を溢れさせた。

「嫌です、お願い、そんなこと……。ルシアス様、わたくしに言ってくださったでしょう? 共に生きようと。あなたがいなくなったら、わたくしはどうすればいいの? わたくしはあなたを……心から愛しています」
「フィオナ……」

力なく、だが嬉しそうにルシアスは目を細めた。

「初めて、言ってくれた。俺を、愛していると。ありがとう……、フィオナ」

優しい微笑みを浮かべたルシアスが、ゆっくりと目を閉じる。

握りしめたルシアスの手から力が抜けていくのを感じて、フィオナは悲痛な叫び声を上げた。

「いや! ルシアス様、行かないで! お願い、わたくしを一人にしないで。ルシアス様!」

ほとばしる涙でなにも見えなくなる。

フィオナはただルシアスの手をギュッと握りしめて、願い続けた。

「神様、どうかお願いします。わたくしの命を、ルシアス様に。なにひとつ残らず、わたくしの全てをルシアス様に捧げます。どうか、お願い……」

フィオナの涙が、手の中の水晶に止めどなく落ちる。

やがてそこから青く、確かな輝きが生まれた。

「おお、なんと!」

バギラの水晶が呼応して光り始める。

二つの水晶の光が交わると、次の瞬間パッと一気に大きな輝きが放たれた。

眩しさに、皆が思わず目を閉じて顔をそらす。

輝きが徐々に収まり、恐る恐る目を開けた時、そこにはベッドに横たわるルシアスに覆いかぶさって目を閉じたフィオナの姿があった。

「フィオナ様!」

ローラの声が響き渡る。

信じられない、信じたくない光景に、その場の誰もが動けずにいた。
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