フィオナの運命
「ルシアス」「フィオナ」

やがて聞こえてきた声に、二人は顔を上げる。

「父上!」「おばあ様!」

ルシアスの父である前国王と、フィオナの祖母のマーサが笑顔で佇んでいた。

その後ろには、肖像画で見た王妃、そしてフィオナが幼い頃に生き別れた父と母の姿もある。

「まあ、ルシアス。なんと立派になって」
「……母上?」
「ええ。こんなふうに会えるなんて、嬉しいわ」

戸惑いながら、ルシアスは初めて母と言葉を交わす。

「フィオナ、大きくなったわね」
「お母様」

感極まって涙ぐむフィオナを、母は優しく抱きしめた。

「すまない、フィオナ。幼かったお前を残してしまって。だが、心優しい子に育ってくれたな」
「お父様……」

するとルシアスがフィオナの隣に立ち、頭を下げる。

「フィオナのご両親にお詫びします。必ず彼女を幸せにすると誓ったにもかかわらず、このようなことに……」

フィオナの父と母は、慌てて遮った。

「まさかそんな、国王陛下がそのようなこと」
「どうぞお顔を上げてくださいませ」

それでも顔を上げないルシアスに、前国王が近づいた。

「ルシアスよ、お前の誓いはそれほど軽いものなのか? 心から愛する人を、なにがあっても幸せにしなければならんだろう」

え?と、ルシアスはようやく顔を上げる。

「父上、それはどういう……?」
「どうもこうもない。お前は一番大切な人を見つけられたのではないのか?」
「はい、フィオナを誰よりも愛しています」

きっぱりとそう言って、ルシアスはフィオナの肩を抱き寄せた。

「それなら一人の男として、命をかけて愛する人を守り抜きなさい。そして国王としても、アレクシア王国の国民を守るのだ。お前には、まだまだやらなければならないことがある。違うか?」

ルシアスはハッとして父を見つめる。

「お前にその覚悟があるのなら、我々はそなた達を地上に降ろしてみせよう」

信じられない想いに、ルシアスはフィオナと顔を見合わせるが、やがてキリッと表情を変えた。

「はい。必ずやフィオナを守り抜き、国民の幸せの為に力を尽くします」
「ああ。頼んだぞ、ルシアス」

そして前国王は、手にしていた王家の象徴である黄金の杖を天に掲げる。

「神に選ばれし我が王族の名において、正しき血を受け継ぐルシアスに、再び命を分け与えたまえ」

マーサも手にしていた水晶を宙に掲げた。

「神に遣えし我がシャーマンの一族も、全ての力を捧げて許しを乞う。清き心を持つフィオナを、今一度地上に遣わせたまえ」

その言葉に応えるように、天からこぼれ落ちた聖なる光が、ルシアスとフィオナの上にキラキラと降り注ぐ。

「フィオナ」
「はい」

ルシアスは、しっかりと両手でフィオナを抱き寄せた。

光に包まれた二人を、皆が祝福する。

「ルシアス、しっかりね。また会える日まで元気で」
「ルシアス、頼んだぞ」

優しい微笑みを浮かべる王妃と、力強く頷いてみせる前国王。

「はい、必ずやフィオナとこの国を幸せに守り抜きます。父上、母上も、どうぞお元気で」

フィオナにも、父と母が声をかける。

「フィオナ、幸せにね」
「いつも見守っているからな」

フィオナは目を潤ませながら、震える声で答えた。

「はい。ありがとうございます、お母様、お父様」

最後にマーサが二人の前に歩み出た。
ルシアスが深々と頭を下げる。

「あなたが注いでくださった命のおかげで、私の今があります。本当にありがとうございました」
「こちらこそ。私の願いを受け取ってくださって、ありがとうございました。どうかフィオナを、よろしくお願いいたします」
「はい。皆様の分も、私が必ずフィオナを幸せにしてみせます」

マーサは微笑んで頷くと、フィオナに優しく語りかけた。

「フィオナ、忘れないで。どんな時も私達は、あなたのそばにいるわ。あなたの人生はまだまだこれから。自分の運命は自分で切り拓くの。ルシアス様と一緒なら大丈夫よ。フィオナ、必ず幸せになりなさい」
「はい、おばあ様」

涙を堪えるフィオナを、ルシアスがギュッと抱きしめる。

二人の身体は光に包まれたまま、スーッと皆から離れた。

「ありがとう、どうかお元気で」

手を振るフィオナとルシアスを、皆も笑顔で見送った。
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