フィオナの運命
かすかな衣擦れの音と共に、誰かが広間に入って来た気配がする。

フィオナは視線を下げたまま、じっとしていた。

「おもてを上げよ」

低く威厳のある声が響き、フィオナはハッとする。

声だけで、その主が国王であることが容易に分かった。

「はい、失礼いたします」

そう言ってゆっくりと顔を上げると、玉座には肖像画で目にしたことがある国王の姿があった。

黄金の肩章と胸の勲章。

そしてなにより、放たれるオーラがフィオナを圧倒する。

「そなたが『生命の巫女』か」

国王に問いかけられ、フィオナは一瞬言葉を失くす。

とにかくなにか返事をしなければと、慌てて口を開いた。

「いえ、あの。わたくしは田舎の牧場に住む、平凡な村娘でございます」

ひたすら頭を下げていると、再び低く張りのある声が響く。

「預言者の水晶がそなたを映し出した。子ヤギのケガを、神から授かった力で治してみせるところを。そなたこそが、『生命の巫女』としての力を受け継いだシャーマンであると」
「そのようなことは、決してございません」

一体どういうことなのかと思いながらも、とにかく否定する。

「畏れながら、どなたかとお間違えかと存じます。わたくしは田舎の平凡な娘にすぎません」
「……なぜ認めようとしない。理由は?」
「いえ、理由など一切ございません」

このままでは国王の怒りを買ってしまう。

そう思うが、どうしようもない。

フィオナはただ身を固くしながら、頭を下げ続けた。
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