祝福のあとで
第23章 何気ない訪問
その日は、空がよく晴れていた。
春の光が、
ガラス越しにロビーへ差し込んで、
ルミエール全体が、いつもより少しだけ柔らかく見える。
ひかりは、
進行表を確認しながら、
スタッフと短い打ち合わせを終えたところだった。
忙しいけれど、
慌ただしすぎない午後。
あの夜のことは、
直とも、特別に話題にしていない。
忙しさに流されるみたいに、
日常は、きちんと続いていた。
「すみません」
背後から声をかけられて、
ひかりは振り返る。
そこに立っていたのは、
見覚えのある二人だった。
由里と、
あの日、Bar Afterに現れた男性——律。
一瞬だけ、
時間が止まった気がした。
でも、
ひかりはすぐに表情を整える。
「いらっしゃいませ。
本日はどういったご用件でしょうか」
仕事の声。
仕事の距離。
由里は、
少し驚いたように目を丸くしてから、
すぐに笑った。
「こんにちは。
急にすみません」
隣で、
律が軽く会釈をする。
「天気が良かったので、
ちょっと下見に来てみようと思って」
「前から、
ここ、気になってたんです」
由里の声は、
素直で、明るい。
ひかりは頷く。
「ありがとうございます。
よろしければ、
館内をご案内しますね」
歩き出しながら、
ひかりは自然に説明を続ける。
チャペルの天井。
光の入り方。
披露宴会場の広さ。
言葉は、
何度も繰り返してきたもの。
でも今日は、
少しだけ違っていた。
「ここ、
落ち着きますね」
由里が、
チャペルの中央で立ち止まる。
「派手すぎなくて。
でも、ちゃんと特別で」
その言い方に、
ひかりの胸の奥が、
わずかに動いた。
「ありがとうございます」
声は、変わらない。
律が、
周囲を見渡しながら言う。
「動線もいいですね。
来る人も、迷わなさそうだ」
実務的な視点。
それを聞いて、
由里が小さく笑う。
「相変わらずだね」
ひかりは、
二人の距離感を、
一歩引いたところから見ていた。
自然で、
迷いがなくて、
すでに“これから”が決まっている空気。
「……あ」
由里が、
ふと思い出したように言う。
「直くんのバーの雰囲気とも、
ちょっと似てる気がして」
春の光が、
ガラス越しにロビーへ差し込んで、
ルミエール全体が、いつもより少しだけ柔らかく見える。
ひかりは、
進行表を確認しながら、
スタッフと短い打ち合わせを終えたところだった。
忙しいけれど、
慌ただしすぎない午後。
あの夜のことは、
直とも、特別に話題にしていない。
忙しさに流されるみたいに、
日常は、きちんと続いていた。
「すみません」
背後から声をかけられて、
ひかりは振り返る。
そこに立っていたのは、
見覚えのある二人だった。
由里と、
あの日、Bar Afterに現れた男性——律。
一瞬だけ、
時間が止まった気がした。
でも、
ひかりはすぐに表情を整える。
「いらっしゃいませ。
本日はどういったご用件でしょうか」
仕事の声。
仕事の距離。
由里は、
少し驚いたように目を丸くしてから、
すぐに笑った。
「こんにちは。
急にすみません」
隣で、
律が軽く会釈をする。
「天気が良かったので、
ちょっと下見に来てみようと思って」
「前から、
ここ、気になってたんです」
由里の声は、
素直で、明るい。
ひかりは頷く。
「ありがとうございます。
よろしければ、
館内をご案内しますね」
歩き出しながら、
ひかりは自然に説明を続ける。
チャペルの天井。
光の入り方。
披露宴会場の広さ。
言葉は、
何度も繰り返してきたもの。
でも今日は、
少しだけ違っていた。
「ここ、
落ち着きますね」
由里が、
チャペルの中央で立ち止まる。
「派手すぎなくて。
でも、ちゃんと特別で」
その言い方に、
ひかりの胸の奥が、
わずかに動いた。
「ありがとうございます」
声は、変わらない。
律が、
周囲を見渡しながら言う。
「動線もいいですね。
来る人も、迷わなさそうだ」
実務的な視点。
それを聞いて、
由里が小さく笑う。
「相変わらずだね」
ひかりは、
二人の距離感を、
一歩引いたところから見ていた。
自然で、
迷いがなくて、
すでに“これから”が決まっている空気。
「……あ」
由里が、
ふと思い出したように言う。
「直くんのバーの雰囲気とも、
ちょっと似てる気がして」