祝福のあとで
ひかりと何度か一緒に仕事をして、
分かったことがある。
ひかりは、
人を急かさない。
でも、
流れを止めない。
感情を前に出さないけれど、
置き去りにもしない。
その距離感が、
直には心地よかった。
いつの間にか、
仕事が終わったあとも、
並んで歩くようになっていた。
家に行くことも、
泊まることも、
自然に増えた。
告白は、
していない。
でも、
恋人じゃないとも、
思っていなかった。
*
今になって思う。
あの夜、
ひかりがフラッと入ってきたこと。
一ヶ月後、
また同じ席に座ったこと。
それを、
“偶然”で片づけるには、
自分は、
あまりにも多くを覚えていた。
——ちゃんと、好きだった。
それは、
後から気づいたことじゃない。
ただ、
言葉にする前に、
時間が進んでしまっただけだ。
直は、
ひかりが去った扉を思い出す。
あの時と同じように、
何も言わずに、
背中を見送った。
ただ一つ違うのは、
今度は、
何を失ったのかを、
はっきり分かっていることだった。