祝福のあとで

 ひかりと何度か一緒に仕事をして、
 分かったことがある。

 ひかりは、
 人を急かさない。

 でも、
 流れを止めない。

 感情を前に出さないけれど、
 置き去りにもしない。

 その距離感が、
 直には心地よかった。

 いつの間にか、
 仕事が終わったあとも、
 並んで歩くようになっていた。

 家に行くことも、
 泊まることも、
 自然に増えた。

 告白は、
 していない。

 でも、
 恋人じゃないとも、
 思っていなかった。

 *

 今になって思う。

 あの夜、
 ひかりがフラッと入ってきたこと。

 一ヶ月後、
 また同じ席に座ったこと。

 それを、
 “偶然”で片づけるには、
 自分は、
 あまりにも多くを覚えていた。

 ——ちゃんと、好きだった。

 それは、
 後から気づいたことじゃない。

 ただ、
 言葉にする前に、
 時間が進んでしまっただけだ。

 直は、
 ひかりが去った扉を思い出す。

 あの時と同じように、
 何も言わずに、
 背中を見送った。

 ただ一つ違うのは、

 今度は、
何を失ったのかを、
はっきり分かっていることだった。
< 135 / 137 >

この作品をシェア

pagetop