祝福のあとで
閉店準備を終えた頃、
Bar Afterの扉が開いた。
この時間に客が来ることは、
ほとんどない。
だから、
顔を上げた瞬間、
直はすぐに分かった。
由里と、律だった。
「遅くにごめん」
律がそう言って、
軽く頭を下げる。
仕事帰りのままの格好。
二人とも、
少しだけ気を遣う顔をしていた。
「大丈夫です」
直は、
いつもと変わらない声で答える。
カウンター越しに立ったまま、
二人を見る。
由里が、
紙袋から一通の封筒を取り出した。
「これ」
差し出されたそれを見て、
直は一瞬だけ視線を落とす。
白い封筒。
控えめな装丁。
見なくても、
中身は分かった。
「結婚式の招待状」
由里が、
少し照れたように言う。
「親族としても、
もちろん来てほしくて」
律が、
その言葉に静かに頷いた。
直は、
封筒を受け取る。
指先に伝わる、
紙の感触がやけに現実的だった。
「……ありがとうございます」
それ以上、
言葉は出てこなかった。
由里は、
その間を埋めるように、
明るく続ける。
「式場もね、
ちゃんと決めたんだ」
「ルミエール」
その名前を聞いても、
直は表情を変えなかった。
もう、
知っている。
だから、
驚かない。
由里は、
少し嬉しそうに言った。
「ひかりさんが担当で」
一拍。
直の中で、
何かが、静かに噛み合う。
「すごく丁寧でさ。
話してて安心する人だよね」
——やっぱり。
その言葉を、
心の中でだけ受け取る。
律が、
何気ない調子で続けた。
「式が終わったら、
しばらくはバタバタするけど」
「由里、
そのあと海外行くって言ってたろ」
由里が、
あ、という顔をして、
すぐに笑った。
「そうそう。
事務所の件も落ち着いたし」
それから、
何でもないことのように言う。
「ひかりさん、
海外の話、出てるんだよね」
Bar Afterの扉が開いた。
この時間に客が来ることは、
ほとんどない。
だから、
顔を上げた瞬間、
直はすぐに分かった。
由里と、律だった。
「遅くにごめん」
律がそう言って、
軽く頭を下げる。
仕事帰りのままの格好。
二人とも、
少しだけ気を遣う顔をしていた。
「大丈夫です」
直は、
いつもと変わらない声で答える。
カウンター越しに立ったまま、
二人を見る。
由里が、
紙袋から一通の封筒を取り出した。
「これ」
差し出されたそれを見て、
直は一瞬だけ視線を落とす。
白い封筒。
控えめな装丁。
見なくても、
中身は分かった。
「結婚式の招待状」
由里が、
少し照れたように言う。
「親族としても、
もちろん来てほしくて」
律が、
その言葉に静かに頷いた。
直は、
封筒を受け取る。
指先に伝わる、
紙の感触がやけに現実的だった。
「……ありがとうございます」
それ以上、
言葉は出てこなかった。
由里は、
その間を埋めるように、
明るく続ける。
「式場もね、
ちゃんと決めたんだ」
「ルミエール」
その名前を聞いても、
直は表情を変えなかった。
もう、
知っている。
だから、
驚かない。
由里は、
少し嬉しそうに言った。
「ひかりさんが担当で」
一拍。
直の中で、
何かが、静かに噛み合う。
「すごく丁寧でさ。
話してて安心する人だよね」
——やっぱり。
その言葉を、
心の中でだけ受け取る。
律が、
何気ない調子で続けた。
「式が終わったら、
しばらくはバタバタするけど」
「由里、
そのあと海外行くって言ってたろ」
由里が、
あ、という顔をして、
すぐに笑った。
「そうそう。
事務所の件も落ち着いたし」
それから、
何でもないことのように言う。
「ひかりさん、
海外の話、出てるんだよね」