祝福のあとで
式場内の導線が切り替わり、
親族用の案内が始まる。
ひかりは、
進行確認のためにロビーへ向かい——
そこで、
視線がぶつかった。
直だった。
黒のスーツ。
派手さはないのに、
場にきちんと馴染んでいる。
一瞬、
時間が止まったように感じる。
直も、
同じように足を止めた。
「……お疲れさまです」
先に言ったのは、
直だった。
仕事でもなく、
昔の距離でもない、
少しだけ慎重な声。
「お疲れさまです」
ひかりも、
同じ調子で返す。
それだけ。
それだけなのに。
周囲の音が、
一瞬、遠くなる。
「今日は」
直は、
視線を逸らさずに言った。
「ありがとうございます」
「……いえ」
ひかりは小さく首を振る。
「お二人の選択ですから」
直は、
一拍だけ置いてから頷いた。
「……そうですね」
それ以上、
何も続かなかった。
でも、
気まずさはない。
ただ、
二ヶ月分の時間が、
きちんと間にあるだけ。
スタッフが、
親族を呼びに来る。
「では、こちらへ」
直は、
一度だけひかりを見てから言った。
「また、あとで」
「はい」
そう答えた瞬間、
胸の奥が、
ほんの少しだけ揺れた。
夏は終わった。
でも、
何もかもが終わったわけじゃない。
ひかりは、
背筋を伸ばして、
再び仕事の場所へ戻った。
親族用の案内が始まる。
ひかりは、
進行確認のためにロビーへ向かい——
そこで、
視線がぶつかった。
直だった。
黒のスーツ。
派手さはないのに、
場にきちんと馴染んでいる。
一瞬、
時間が止まったように感じる。
直も、
同じように足を止めた。
「……お疲れさまです」
先に言ったのは、
直だった。
仕事でもなく、
昔の距離でもない、
少しだけ慎重な声。
「お疲れさまです」
ひかりも、
同じ調子で返す。
それだけ。
それだけなのに。
周囲の音が、
一瞬、遠くなる。
「今日は」
直は、
視線を逸らさずに言った。
「ありがとうございます」
「……いえ」
ひかりは小さく首を振る。
「お二人の選択ですから」
直は、
一拍だけ置いてから頷いた。
「……そうですね」
それ以上、
何も続かなかった。
でも、
気まずさはない。
ただ、
二ヶ月分の時間が、
きちんと間にあるだけ。
スタッフが、
親族を呼びに来る。
「では、こちらへ」
直は、
一度だけひかりを見てから言った。
「また、あとで」
「はい」
そう答えた瞬間、
胸の奥が、
ほんの少しだけ揺れた。
夏は終わった。
でも、
何もかもが終わったわけじゃない。
ひかりは、
背筋を伸ばして、
再び仕事の場所へ戻った。