祝福のあとで
 ひかりは、
 その言葉を、
 すぐには信じなかった。

 信じたいとも、
 疑いたいとも違う。

 ただ、
 自分が見ていたものと、
 直の言葉が、
 少しずれている気がした。

「由里さんと再会してから」

 直は、
 続ける。

「懐かしいって思ったことはある」

「でも、
 それだけだ」

 ひかりは、
 ふと気づく。

 直は、
 “否定”をしていない。

 “訂正”をしている。

 自分が、
 勝手に引いた線を。

「ひかりが離れたのは」

 直の声が、
 少しだけ低くなる。

「俺が、
 まだ過去にいると思ったから?」

 問いは、
 静かだった。

 でも、
 逃げ道はなかった。

 ひかりは、
 一度だけ目を伏せてから、
 正直に言った。

「……はい」

「だって」

 言葉が、
 少し震える。

「私は、
 好きだって、
 言われたことがないから」

 直は、
 息を吸った。

 すぐには返さない。

 でも、
 視線は逸らさない。

 ひかりは、
 その沈黙の中で思う。

 ——私、
 勘違いしてたのかな。

 それとも、
 ちゃんと怖かっただけ?

 チャペルの空気は、
 変わらず静かだった。

 でも、
 二人の間にあった誤解は、
 少しずつ、
 形を持ち始めていた。
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