祝福のあとで
言葉が途切れても、
 空気は、冷えなかった。

 直は、
 ひかりを抱き寄せる。

 勢いじゃない。
 確かめるみたいな、静かな動き。

直は、
 ひかりの背中を撫でながら、
 低く息を吐く。

「……我慢、できなくていい?」

 問いかけは、
 冗談みたいに柔らかい。

 でも、
 声は正直だった。

 ひかりは、
 顔を上げて、
 直を見る。

 迷いはない。

 ただ、
 少しだけ照れたみたいに笑って言う。

「……うん」

 それだけで、
 直の指先に、
 はっきり熱が宿る。

 抱き寄せられて、
 額が触れて、
 そのまま、
 ゆっくりと唇が重なる。

 急がない。
 確かめるみたいなキス。

 ひかりの呼吸が、
 少しだけ乱れる。

 直は、
 その変化を逃さない。

 直は、
 ひかりの額に軽く口づける。

 それから、
 ほんの少しだけ口角を上げた。

「……今日は」


「寝かせられないかも」

 冗談みたいな言い方なのに、
 目は、笑っていなかった。

 ひかりが、
 驚いたように瞬きをすると、

 直は、
 肩をすくめる。

「我慢、長かったから」

 ひかりの胸が、
 小さく跳ねる。

「……意地悪」

 そう言いながらも、
 声は、どこか柔らかい。

 直は、
 その反応を見て、
 満足そうに息を吐いた。

「今さら?」

 夜は、
 もう、
 逃げ場をなくしていた。
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