祝福のあとで

嫉妬


店内は、久しぶりに賑やかだった。

グラスの重なる音。
笑い声。
少しだけ大きめに流れる音楽。

Bar Afterは、
いつもの落ち着いた夜よりも、
今日はずっと“明るい場所”になっている。

カウンターの内側では、
直が、手際よくドリンクを作っていた。

まさか、
専門学校時代の友人の結婚式の二次会を、
この人のバーで迎えることになるなんて。

あの頃は、
こんな形で人生が交差するなんて、
想像もしていなかった。

動きは変わらないのに、
知っている人たちが多いせいか、
空気がどこか柔らかい。

ひかりは、
カウンターから少し離れたテーブル席で、
専門学校時代の友人たちに囲まれていた。

ブライダル業界。
久しぶりに集まる顔。
近況報告は、自然と仕事と結婚の話になる。

「ひかり、今も式場?」

「うん。
 海外行ってたけど、戻ってきてからは前と同じ」

軽く答える。

深く説明するつもりはない。
今日はあくまで、友人の祝いの場だから。

「忙しそうだね」

「まあ、それなりに」

笑ってグラスを傾ける。

すると、
誰かが、何気なく言った。

「仕事で散々見てると、
自分のことは後回しになりがちだよね」

「分かる。
理想はあるのに、
タイミング逃すやつ」

これに続くひかりの返しは、

ひかりは、
笑って肩をすくめた。

「まあ、
そういう人、多いかもね」

「ひかりも、そうでしょ?」

悪意はない。
ただの世間話。

ひかりは、
一瞬だけ言葉を選んでから、
小さく笑った。

「……うん」
< 171 / 180 >

この作品をシェア

pagetop