祝福のあとで
気づけば、
直とは、何気ない連絡を交わすようになっていた。

用事があるわけでも、
約束を決めるためでもない。

仕事が終わったあとに、
「今日は遅くなりました」とか、
「今、仕込み中です」とか。

それだけのやり取り。

でも、
それが途切れずに続いていることが、
少し不思議だった。

お互いのことも、
少しずつ話すようになった。

兄弟がいるかどうか。
実家は、どのあたりか。
帰省する頻度。

深掘りはしない。
でも、
聞いて終わりにもならない。

学生時代にやっていたこと。
習い事の話。
続かなかった理由。

直が、
「向いてなかったんでしょうね」と
淡々と言ったのを覚えている。

ひかりは、
それを否定しなかった。

最近ハマっていることも、
特別じゃない話ばかりだった。

よく行く店。
気に入っている音楽。
休みの日の過ごし方。

どれも、
相手を知るための質問というより、
ただ、
会話の流れで出てきただけ。

それなのに。

いつの間にか、
直の生活が、
ひかりの中に自然と置かれるようになっていた。

無理に覚えようとしなくても、
残るものがあった。

連絡を返すタイミング。
言葉の選び方。
返事が来なくても、
不安にならない距離。

それは、
恋人だから、というより、
一緒にいて楽な人、という感覚に近かった。
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