祝福のあとで
フェアの終わりが近づくと、
会場の空気は、少しだけ緩んだ。

片付けに入るスタッフの動き。
小さく交わされる「お疲れさま」の声。

ひかりは、
いつの間にか、
カウンターの内側ではなく、
直の隣に立っていた。

同じ目線で、
同じ方向を見る。

それだけのことなのに、
胸の奥が、静かに落ち着く。

「ひかりさん」

声をかけられて振り向くと、
紬ちゃんが、展示ケースを閉じながら近づいてきた。

「お疲れさまでした。
 今日、すごく良かったです」

「ありがとう」

ひかりがそう返すと、
紬ちゃんは、ちらりと直の方を見る。

「……さっきから思ってたんですけど」

少しだけ声を落とす。

「二人、並ぶと雰囲気が一緒ですね」

思いがけない言葉だった。

「空気が、同じというか。
 安心する感じ」

仕事の感想みたいに、自然に。

ひかりは、
一瞬だけ言葉に迷ってから、微笑った。

「そう見える?」

「はい」

即答。

「ひかりさんも、
 今日ずっと落ち着いてて」

それから、
照れたように付け足す。

「……結婚式って、
 やっぱりいいなって思いました」

紬ちゃんらしい言葉だった。

直は、
会話に割り込まず、
ただ静かに立っている。

それなのに、
その場にちゃんといる。

ひかりは、
その横顔を見て思う。

仕事人としての彼を、
改めて、好きだと思った。

隣に立っているのが、
自然だと思えること。

それが、
今の自分にとって、
何よりの答えだった。
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