祝福のあとで
第20章 泊まらなかった夜
フェアが終わり、
会場の照明が一段落とされる。
スタッフの足音が遠ざかり、
最後に残ったのは、
片付けの途中の静けさだけだった。
「お疲れさまでした」
直が、いつもより少し低い声で言う。
「お疲れさま」
ひかりも、同じ温度で返した。
二人で並んで、
グラスを片付ける。
言葉は少ない。
でも、動きは自然に噛み合っていた。
「今日は、助かりました」
ひかりが言うと、
直は首を振る。
「いい仕事でした」
評価でも、照れでもない。
ただの事実みたいな言い方。
それが、嬉しかった。
最後の照明を落とす前、
直がふと手を止める。
「……少し、飲みますか」
仕事終わりの一言。
「はい」
即答だった。
カウンターの内側で、
二人分のグラスが置かれる。
今日は、
演出用じゃない。
説明もいらない。
ひかりは一口飲んで、
小さく息を吐いた。
「……今日」
言いかけて、やめる。
直は、続きを急かさない。
「隣に立ってるの、
自然でした」
それだけ言う。
直は、
一瞬だけこちらを見てから、
視線をグラスに戻した。
「ええ」
短い返事。
でも、
その声は、どこか柔らかい。
ひかりは思う。
仕事人としての彼を、
恋人としての彼を、
同時に見られた夜だった。
それが、
こんなにも安心するなんて。
グラスが触れ合う音が、
片付けの終わった会場に、静かに残った。
今日は、
特別な言葉はいらない。
ただ、
同じ場所で、
同じ夜を終える。
それだけで、
十分に甘かった。
会場の照明が一段落とされる。
スタッフの足音が遠ざかり、
最後に残ったのは、
片付けの途中の静けさだけだった。
「お疲れさまでした」
直が、いつもより少し低い声で言う。
「お疲れさま」
ひかりも、同じ温度で返した。
二人で並んで、
グラスを片付ける。
言葉は少ない。
でも、動きは自然に噛み合っていた。
「今日は、助かりました」
ひかりが言うと、
直は首を振る。
「いい仕事でした」
評価でも、照れでもない。
ただの事実みたいな言い方。
それが、嬉しかった。
最後の照明を落とす前、
直がふと手を止める。
「……少し、飲みますか」
仕事終わりの一言。
「はい」
即答だった。
カウンターの内側で、
二人分のグラスが置かれる。
今日は、
演出用じゃない。
説明もいらない。
ひかりは一口飲んで、
小さく息を吐いた。
「……今日」
言いかけて、やめる。
直は、続きを急かさない。
「隣に立ってるの、
自然でした」
それだけ言う。
直は、
一瞬だけこちらを見てから、
視線をグラスに戻した。
「ええ」
短い返事。
でも、
その声は、どこか柔らかい。
ひかりは思う。
仕事人としての彼を、
恋人としての彼を、
同時に見られた夜だった。
それが、
こんなにも安心するなんて。
グラスが触れ合う音が、
片付けの終わった会場に、静かに残った。
今日は、
特別な言葉はいらない。
ただ、
同じ場所で、
同じ夜を終える。
それだけで、
十分に甘かった。