先輩、好きです。
分からない後輩
昨日のことを考えないようにしている、という自覚はあった。
なのに、ふとした瞬間に思い出してしまう。
────先輩、好きです。
あの低い声と、あのひと言。
思い出すたびに胸の奥がむず痒くなる。
いや、むず痒いなんて生易しいものじゃない。
思考が一瞬で止まって、熱が全身を駆け巡る。
息が詰まるみたいに苦しいはずなのに、妙に頭はぼうっとして、その度に矢吹の顔が脳裏に浮かぶ。
感情のまるでこもっていないような表情なのに、まっすぐ私を見つめるあの目が、忘れようとしていた言葉を何度も掘り返してくる。
「おーい、聞いてる?」
突然、視界で大きな手がひらひらと揺れて、はっと顔を上げた。
目の前には、タオルを肩にかけた山岸が立っていた。
少し呆れたような、でもどこか面白がっているような不思議な顔で私を見下ろしている。