Toxic・Romance
「月島、聞いてる?」

 呼ばれ、ふいに顔を上げた。不思議そうな顔で私を見つめるのは、先輩である夜永(やえ)さんだ。

 そうだ、今は昼休みの真っ只中で、ここは家ではなく社食だ。

 それから困ったことに、ピストルの衝撃により前後の会話が全く思い出せない。しかしここで、聞いてません、と言えば先輩方から私の信用を失いかねない。

「えっ、ああ、聞いてます、聞いてますよ!九州場所の話ですよね!」

 ということで一か八かの賭けに出た。

「なんで大相撲?」

 しかし先輩の失笑を見る限り、私の予想は全然違ったらしい。

「月島、大相撲好きなの?」

「はい!取り組みには一つ一つドラマがあります、大好きです!」

「あー……そっかそっか」

「特に霧ノ海が好きなんですよね。一昨日の白鷺丸との取り組みもすっごく面白くて」

「ストーップ!相撲じゃなくて、本部の営業の真壁さん、出産を機に退職するんだって、って話してたの。あの綺麗な人、わかる?」

 趣味の一つを語ろうとしたその時、ぴたりと動きが止まった。
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