Toxic・Romance
 理想の恋はいくらでも語れる。現実の恋は、私には程遠いもの。勿体ないもの。努力するもの。報われないもの。良い子でいなきゃいけないもの。

「恋人は、いま、ノーサンキューです!」

 しかし、それらはあけすけに言えることじゃないって、世間知らずでもちゃんと弁えている。だから私は、そっと、なんでもない笑顔を作った。

「えー、もったいな!」

「月島の顔と性格だったら大学時代無双してたでしょ」

「してませんよ!ひっそりしてました」

「え、じゃあ、もしかして社会人デビュー?」

「デビュー……?それって、はい、私社会人デビューです☆って何か宣言した方が良いんですか?」

「その発言が、もう、デビューじゃないって言ってるようなもんだよね」

「可愛いのにね」
 
まさか、自分の憧れや理想は物語に落とし込んでいます、なんて口が裂けても言えなくて、わたしはへらっと笑った。

 創作を趣味にした理由はいくつかあって、そのうちの一つは私の恋愛観に直結している。美しさを投影すべきもの。決して現実を見せない、理想の箱庭。だから綺麗で、憧れだから汚れもない。不完全で、うつくしいもの。

 ──だから嘘くさいってこと?

 あんなに楽しかったはじまりの作業がちっとも捗らない。ああ、まだ、創作意欲は戻らないらしい。
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