Toxic・Romance
 ──結局、私はその後の三時間を、企画のひとからの宿題に費やした。
 悔しいけれど、私は任された仕事を中途半端に放り出せない性格だ。さらに完璧なグラフを作成し、提案文も「簡潔に」というオーダーを嫌味なほど忠実に守り、一文字の無駄もないスタイリッシュな文章に磨き上げた。

 これで文句は言わせない。渾身の修正資料を添付し、送信ボタンを叩きつけるようにクリックした。

 しかし、数分後に返ってきたのは、期待(あるいは反論の準備)を裏切る、冷え切った定型文だった。

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件名:修正資料確認
送信者:kaoru.katagiri@seiran-pr.co.jp

月島さん、

資料、一通り確認しました。 修正点は問題なし。対応ありがとう。

次回以降、P5レベルのデータは最初から精度担保してもらえると助かります。 こっちもスケジュールが詰まっているので。

以上、引き続きよろしく。

片桐

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「…………精度担保」

 画面を凝視したまま、私の口から乾いた笑いが漏れた。
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