Toxic・Romance
なんなの、その言い草。  まるで自動販売機のボタンを押して、決まった味の飲み物が出てきた時のような、無機質な応答。

「はいはい、わかりましたよっと……!」

 心の中で精一杯の悪態をつき、嫌味を無理やり咀嚼して飲み込む。

 この人は、きっと血の代わりに冷淡な青いインクでも流れているんだろう。感情の起伏がなく、効率と数字だけを信奉する、美意識の欠片もない仕事マシーン。

 でも、この胸の奥で煮えくり返るようなフラストレーションが、皮肉にも萌生ゆるを呼び覚ます。

(……このひとの言動、全部メモしてやる。次の悪役のモデルにして、徹底的に物語の中でこてんぱんにしてやるんだから!)

 彼からの冷たいメールをフォルダに放り込み、私は激しくキーボードを叩き始めた。 仕事のストレスを、創作のエネルギーへ変換する。

 それが、私が企画のひとという天敵から自分を守る、唯一の武装だった。

 この人は確かに苦手だ。けれど、その裏で、私が趣味を創作活動に据える理由その2がこの人だったりもする。

 自分の機嫌は自分で取るように、溜め込んだストレスは捌け口を作らないとやっていけないもの。このやり場のないフラストレーションを一時的に忘れ去りたくて、非現実的な世界に浸かっているのだ。

 
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