Toxic・Romance
投稿、完了。

 エンターキーを押した瞬間、全身の力が抜けてソファーに崩れ落ちた。 時刻は深夜二時を回っている。  

「……書いちゃった」

 満月の夜の新作投稿。私のポリシーは守られたけれど、内容はこれまでの「萌生ゆる」作品とはかけ離れた、冷たくて救いのないアンチヒーローの独白から始まるストーリー。

 モデルはもちろん、彼だ。

 彼に言われた言葉、喫煙所で盗み聞きした彼の恋愛観、そして私が感じた底知れない冷酷さ。それらを全て煮詰めて、物語という形に昇華した。

「(こんなの、読者さんは求めてないよね……)」

 「怖かったです」「ゆるさんらしくない」なんてコメントが来るかもしれない。最悪、ファンが離れてしまうかも。でも、今の私にはこれしか書けなかった。

 翌朝、重たい瞼をこすりながら、習慣でスマホを手に取り、創作プラットフォームのアプリを開いた。

「えっ」

 寝ぼけた頭が一瞬で覚醒した。通知の数が、バグっていた。

 赤い数字が「99+」と表示されている。いつもの新作発表時の、軽く十倍はある。

「うそ、炎上……?」

 血の気が引く思いで、恐る恐る自作のページを開いた。 アクセスを表すグラフが、見たことのない角度で急上昇している。

 
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