Toxic・Romance
そして彼は興味を失ったようにスマホをポケットに仕舞うと、足元に視線を落とした。
その細く綺麗な指が、滑るようにポケットを探り、一本の煙草を取り出した。ライターの青白い炎が、彼の美貌を一瞬だけ照らす。薄いくちびるから吐き出された煙が、彼の冷たい表情を覆い隠した。
彼らは、同じビルに入っているグループ会社の社員たちだ。
といっても私とは立場が違う。彼らは中核企業、私はその系列会社。
自然と、向こうのほうが“上”の空気を纏っている。
中でもあの人は企画課に所属していて、私は「企画のひと」に対して苦手意識を持っていた。
一人が揶揄うように言った。
「おまえ、詰められようなものなら即捨てそうだもんな」
揶揄われた企画のひとは何食わぬ顔をしたまま、いやむしろ、心底感心したような、尊敬すらしているような顔で応じた。
「えらいね、捨てねえんだ」
その一言で、彼らの恋愛に対する価値観の差が決定的に浮き彫りになった。
「えっ、マジかよ」
もう一人が呆れたように呟く。
「お前な、未練ってものがないの」
「……誰に? なんに対して?」
その人は本当に分からないといった様子で首を傾げた。「流石っす」「すげえわ」と、二人は笑う。企画のひともまた他人事のように口角を上げていた。
その細く綺麗な指が、滑るようにポケットを探り、一本の煙草を取り出した。ライターの青白い炎が、彼の美貌を一瞬だけ照らす。薄いくちびるから吐き出された煙が、彼の冷たい表情を覆い隠した。
彼らは、同じビルに入っているグループ会社の社員たちだ。
といっても私とは立場が違う。彼らは中核企業、私はその系列会社。
自然と、向こうのほうが“上”の空気を纏っている。
中でもあの人は企画課に所属していて、私は「企画のひと」に対して苦手意識を持っていた。
一人が揶揄うように言った。
「おまえ、詰められようなものなら即捨てそうだもんな」
揶揄われた企画のひとは何食わぬ顔をしたまま、いやむしろ、心底感心したような、尊敬すらしているような顔で応じた。
「えらいね、捨てねえんだ」
その一言で、彼らの恋愛に対する価値観の差が決定的に浮き彫りになった。
「えっ、マジかよ」
もう一人が呆れたように呟く。
「お前な、未練ってものがないの」
「……誰に? なんに対して?」
その人は本当に分からないといった様子で首を傾げた。「流石っす」「すげえわ」と、二人は笑う。企画のひともまた他人事のように口角を上げていた。