一等星センセーション―日陰女子、イケメンアイドルになります!?―
頬を掠めたさらりとした髪の感触。
花の香りとは違う、甘めのムスクの香り。
「下見て、千景」
言うとおりにした目線の先に、ユウキがスマホを構えている。
こちらを向く画面に起動してるのはインカメ。
満開の桜を背景に頬を寄せ合う私とユウキが映っている。
パシャリと響くシャッター音。
きょとん顔の私と、ツンな澄まし顔のユウキ。
「はい次。ちゃんと笑って」
言われて反射的に作ったのは、習得したばかりのアイドルスマイル。
ユウキも唇を薄く開いて、大きな瞳がより丸く大きく見せるきゅるっと音がしそうな笑顔になっている。
二枚目に撮ったのは、完全にアイドルしてる私たちの姿だった。
「“一緒に入学式”とか、ウケそうな写真は撮っとかないとね」
スマホ画面を確認しながら、しれっとそんなことを言う。
「抜け目ない!」
「当たり前」
でも、さっきの空気でやることだった?
なんて思った時、一枚目の写真の画面を掲げたユウキがにやりと笑った。
「こっちはプライベート用。
ベタに立て看板の前で撮る家族写真より、エモくない?」
折り重なる桜の花の隙間には、澄んだ青空。
入学式の開始時間が迫ってきた校舎から、中に入るよう急かす声が聞こえてくる。
「……あとでそれ、送ってね!」
「ん。とりあえず今は、走らないとだね」
花びらが舞う並木道を2人並んで走り出す。
きっと、普通とは違うものになる高校生活の第1日目。
そんな今日は、ちょっとだけ普通の高校生だった気がした。