一等星センセーション―日陰女子、イケメンアイドルになります!?―
#17 一等星に
テレビで活躍している華やかな世界にいる人たちが行き交う廊下を、南に手を引かれながら抜けていく。
警備員はいるものの開け放たれている大型搬入口から、外へと出た。
「大丈夫なの?これ……」
練習着のままだし。顔モロ出しだし。
まだ無名だから問題にはならなそうだけど、SEIKOさんにバレたら意識が低いって怒られそうだ。
「あー、空気うまっ。なんか澱んでなかった?屋内の空気」
……自由すぎる。少しも悪びれてない。
「いろんな匂い混ざっててさぁ」と言いながら、呑気に伸びをする南を横目に見る。
いつも通りの自然体。
だから肩の力が抜けてきた。
特に会話もないまま、ドームの壁に沿って2人で歩く。
開演時間はまだずっと先。
遊歩道まで出ると、犬を連れたお爺さんが横を通り過ぎる。
コンビニ袋を提げた眠そうな人が信号を渡っていくのが見えた。
それぞれの朝を過ごす人達。
私たちもその中のひとりとして溶け込んでいる。
――ここにいるのがお兄ちゃんなら、きっと違う。
人を惹きつける強い輝きに、誰もがその存在に気付くだろう。
今すれ違ったお兄さんだって、きっと足を止めて振り返る。
「美嶋日向だ」って。
でも――
私のことは、誰も見ない。
今すれ違った人も、私が5万人に囲まれたステージに立つような人間だなんて、思いもしないだろう。
『日向、あなたは自慢の子よ』
お母さんの目は、いつもお兄ちゃんばかり見ていた。
たまに私の方を見ても、その目はすぐ逸らされてしまうのに。
前を向きかけた顔が、また下を向く。足が止まってしまった。