一等星センセーション―日陰女子、イケメンアイドルになります!?―
「……星?」
「そう。芸能界で輝いてる奴のことを、スターって言うだろ?」
こくり、小さく頷く。
南は空を見上げて、少し難しい顔になった。
「空にある星はさ、核ゆーごー反応?……って言って、自分の力で光ってんだって。
夜空で見つけてもらえるように、死に物狂いで自分を燃やしてんの」
“才能”――ずっと私にまとわりついていた言葉が、少しだけ軽くなった気がした。
呆然としている私に、南はふっと笑いかけた。
「まっこれは受け売りなんだけど!」
南がオーバーに肩を竦める。それから私の方を見て、ニヤリと笑った。
「俺たちは今日までバッチバチに燃えてきた!そーだろ?」
その言葉に、目の中に光が戻る。
くすむ春の色が鮮やかに変わって、外の空気をちゃんと吸い込めた気がした。
「だからあとは夜を待つだけ!」
南は空に向かってまっすぐ人差し指を突きつける。
朝の空に、星はまだない。
「楽しみじゃない?千景。
5万人に見つけてもらえるの」
東都ドームを背にした南が、大きく手を広げて笑う。
その姿が青空に登る太陽を追い越して、一等輝く星に見えた。
私は――私たちは、まだ見つかってない、星。
どんな輝きを放つかもわからないのに、隠れてしまうのはもったいない。
そんな希望が、一瞬だけちらついて。
影の中に逃げ込もうとしていた足が、一歩だけ空の下に出せたような気がした。
「……心配かけてごめんね、南」
何だか清々しい気持ち。
ちょっとだけ走り出したい気分だ。
「先、戻ってもいい?他のみんなにも謝らなきゃだし――
夜空でちゃんと光れるように、最後までちゃんと努力したい」
「悪足掻きかもだけど」と頬を掻いて笑う。
南は笑い混じりに安堵の息を漏らすと、「あとで」と手を振って私を見送ってくれた。
テンポよくアスファルトを蹴る音と、まだ少し冷たい春風が心地いい。
大きくて、白くて丸い、私にとっての夜空に向かって、一直線に走っていった。