一等星センセーション―日陰女子、イケメンアイドルになります!?―



搬入口からドームに戻ると、控え室が並ぶ廊下は不自然にざわめいていた。

「なんで?出演予定じゃないよね?」
「というか、今アメリカにいるはずじゃ――……」

立ち止まって噂話している人の横を走り去るたび、ぽつりぽつりとそんな話が聞こえてくる。

私が目指していた場所、メンズアイドルの合同控え室の前にはちょっとした人集りができていた。

「すみません、通ります――」

小さくなりながら人の間を縫って、なんとか部屋の中に入る。

1番最初に目に入った人物を見て、驚いた。

さらりと軽い、艶やかな黒髪。
柔和に微笑む口元と、強者感が隠しきれてない吊り目を持つ顔立ちは、くっきりとしてるのに涼やか。
自然に整った姿勢は、19歳には見えない風格を漂わせている。

「千景。どこ行ってたの?」

普段のトーンよりちょっと高めのハスキーボイス。
この好青年は私の兄であり、今は俳優の顔をした美嶋日向だ。

「お兄ちゃん……」

言った瞬間、ギャラリーがざわつく。

お兄ちゃんは裏でも表でも自分の話をしないことで有名。
それが急に弟が現れて、しかもスタフェスの関係者だと言うのだから当然のざわめきだ。

いつから相手をしてくれていたのか、蓮達は妙に姿勢良く気まずそうな顔をしている。

何を話してたんだろう?
flying-Hi結成の件で、大きな因縁があるはずだけど。

「ごめんなさい、時間もないのでちょっと弟を借ります。
グループ加入を反故にした件の謝罪は、後日。……皆さん揃った時に、改めて」


一瞬、誰かを探すように視線を動かして、ホッとしたようにも残念そうにも見える顔をした気がしたけど、気のせい?

ギャラリーに好奇の目で見られながら、お兄ちゃんの後について控え室を出ていく。

ユウキが心配そうに眉を顰めて見送っていたのを、私は気づかなかった。
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