一等星センセーション―日陰女子、イケメンアイドルになります!?―
#3 アイドル、やりたくないの?
誰もいない、大手芸能事務所の一室。
少女漫画のワンシーンみたいな、絵に描いたような壁ドン。
目の前にはワイルド系長身イケメン。
ただし空気は甘くなくて、絶体絶命。
「――じゃ、ちゃんと教えてもらおっか。
なんで男のフリなんてしてるのか」
鼓膜を直接震わせるほどの距離に落ちる、低く落ち着いたトーンの声。
緊張と同様で目は泳ぐのに、まっすぐで強い南の瞳に射止められて、逸らせない。
どうしよう。観念して白状する?
いや、でもただカマかけてるだけの可能性だってある。
落ち着け。落ち着け。
ここは冷静に、暴君・兄直伝の演技力を発揮する時だ。
ほんの一瞬目を伏せて、自分の世界を切り替える。
“俺”は男・美嶋千景。
俺は男・美嶋千景……
目と眉に力を入れて、軽く顎を上げ下目に南を睨む。
強く、男っぽく見せるための虚勢だ。
「――し、失礼な奴だな。
俺はれっきとした男だけど」
ゔ。声がちょっとだけ震えた。
こういう時、実力を発揮しきれないのが私だな。
「あはっ、演技うまっ!でも誤魔化し方は下手くそ。
さっきまでオドオドしてた奴が急に強気になんのはおかしいっしょ」
あっさり看破されてくっ、と喉で息が詰まる。
そんな私を見て南は真上で楽しそうに笑っている。
「俺さ、元々知ってんの。日向のキョーダイは妹ひとりだけだって」
え。
「なんで……」
思わず素が出てしまって、慌てて口を塞ぐ。
伺い見た南の顔は、確信を持った余裕の笑みだ。