お試し婚のはずが、いつの間にか溺愛されています!~二度も婚約破棄された外科医は受付事務員に愛を捧ぐ~
「勝浦さんが婚約者になってくれないか?」
「え?」
「まずは、お試しでもいいんだ。今まで気付かなかったが、君には魅力がある」
「はぁ?」
 私の頭の中はフリーズ寸前だった。
 城高山先生は、一体何を言い出しているの?

「健康状態も問題なさそうだし……男も居なそうだ」
 一瞬、自分のことを言われていると理解するまでに間があった。
 次いで、胸の奥にじわりと不快感が広がる。
 まるで書類でも確認するかのような物言いに、私の眉がひそかに寄った。

 ――なんで、そんなことまで。
 感情を抑えきれず、私は視線を上げる。

「……だったら、何なんですか?」

 声は低く、少し棘を含んでいた。
 城高山先生はその反応を予想していたのか、少しだけ息を整える。
 そして、いつになく真剣な表情で私をまっすぐ見つめた。

「言い方が悪かったな。すまない。俺は貴方に興味を抱いてしまった。多少、強引なお願いにはなるが……俺と結婚を前提に、交際しないか?」

 あまりにも唐突な言葉だった。
 冗談だと切り捨てるには、彼の目は真剣すぎて、
 聞き間違いだと思うには、空気が静まり返りすぎている。

「……は?」

 間の抜けた声が漏れ、私は完全に言葉を失った。
 胸の鼓動が急に早まり、頭の中が一気に真っ白になる。

 今、なんて言ったの?

 理解が追いつかないまま、私はただ呆然としてしまう。しばらくのあいだ言葉を失い、突然投げかけられた『結婚を前提に』という言葉が、頭の中で反響するばかりで、思考が完全にフリーズしている。

 返事を待つように向けられた視線が痛い。
 何か言わなければ、と思うのに、口を開くことができなかった。

 沈黙に耐えかねたのか、城高山先生のほうが先に息を吐く。

「……急すぎたな。すまない」
 少しだけ視線を外し、彼は続けた。
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