お試し婚のはずが、いつの間にか溺愛されています!~二度も婚約破棄された外科医は受付事務員に愛を捧ぐ~
お試し婚の申し込み
 城高山先生と偽装恋人のような関係になってからも、病院のロビーはいつも通りの慌ただしさに包まれていた。
 患者さんの案内、電話対応、予約の確認。

 誰にも言えない関係。

 偽装だから……。
 まだ恋愛かどうかも分からないから……。

 それなのに、隠すことに、こんなに神経を使っている時点で、こんなにも気持ちが疲弊している。
 同僚の森さんに関係性を勘繰られたということは、病院内で見ていた人物が居るということ。

 私用ではなくて、患者の件で本当に城高山先生に用事があっても……何だか外科自体に行きずらい。
 外科の先生宛に宅配便が届いたので、これから外科に届けなくてはいけないのに。
 エレベーターの表示灯が光る。
 外科のフロアを示す数字を見つめながら、私は胸の奥のざわめきを静かに押し込めた。

「お疲れ様です、〇〇先生に宅配便が届いてたので置いときますね」
「ありがとうございます」
 良かった、城高山先生は不在だった。
 私は意を決して親友にだけは打ち明けてもいいかと、就業後に彼にメッセージで尋ねた。
 偽装であること、周囲には秘密にしていること。その重さを、少しだけ分け合いたかった。

 帰宅後しばらくすると返信がきた。
『勝浦さんが、本当に恋人として、そして将来、婚約者として俺を受け入れてくれるなら、誰に話してくれても構わない。そのときは、もう秘密にするのはやめにしようか』
 そこで一度、言葉を切られて……もう一通届いた。
『でも、そうじゃない場合は、勝浦さんのご迷惑になりかねないから、秘密のままでいよう』と。

 私の胸が、小さく揺れた。
 その言葉には逃げ道がない。

 自分からメッセージを送ったのに返信ができないままだった。三十分後に城高山先生から着信があった。
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