お試し婚のはずが、いつの間にか溺愛されています!~二度も婚約破棄された外科医は受付事務員に愛を捧ぐ~
 ──それから数日後。
 城高山先生のお義母様の晴美さんから『少し、お茶でもいかが?』と連絡があった。
 城高山家に招かれた時、連絡先を交換して以来、晴美さんからたまに連絡がくるようになった。
 指定されたのは、病院近くの落ち着いた喫茶店だった。

「今日は、時間を作ってくれてありがとう」
 晴美さんは柔らかく微笑み、カップを手に取った。

「いえ……こちらこそ」
 しばらく、当たり障りのない話をしたあと、晴美さんは、ふと視線を落とした。

「あの日、少し怖そうな顔をしていたわね」
 心臓が、小さく跳ねた。
「……分かりますか」
「分かるわよ。私も、ここに来たとき、同じ顔をしていたもの」
 意外な言葉に、顔を上げる。

「私も、最初は外部の人間だったの。家柄も、医療の知識も、何もなかった。だから、あなたの不安は、よく分かる」
 胸の奥に溜め込んでいたものが、少しずつ解けていく。
「私……、本音を言いますと……自分が、城高山先生と釣り合わない気がして」
 声が、自然と低くなる。
「病院の跡取りの家に普通のサラリーマンの娘が入るなんてちゃんと出来るのか、迷惑をかけないか、選ばれる資格があるのか。考えたらキリがなくて……」
 言葉にした瞬間、喉が詰まった。
 晴美さんは、すぐには答えなかった。その沈黙が、逆に優しかった。
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