御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 現在、部屋にスタッフはいないけれど、必要に応じてスタッフを呼ぶことができるらしく、壁際にはフロントに繋がる受話器があった。
 その他、食事を運びに来るときだけは事前に連絡が入るらしい。

 私は荷物を寝室に置くと、扉の奥をひとつずつ見て回った。

「すごい。本当にお風呂まであります……! 大きい……」
「数人は入れる広さだな」

 まだ湯の張られてない浴槽の縁に彼が座る。
 一部、ヒノキで作られているらしく、木の温もりを感じられる内装になっていた。

「景色を見ながら入れるなんて贅沢です」
「気に入った?」
「はい……! って、すみません……私ばかりはしゃいでしまって」

 自分ばかりがはしゃいで動き回っていることに気付き、声のトーンを落とす。
 彼は、俺たちしかいないんだから、と、私の頭をぽんぽんと撫でた。

「一応、近くにもスパがあるらしい。食事も外でとることができるらしいけれど……中でいい?」
「はい。今日は、このホテルを存分に楽しみたいです」

 外に一歩も出なくてもここだけで完結するのだ。今日はここで食事もお風呂も楽しみたい。

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