御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「どうする? 先にお風呂に入る?」
「いいんですか?」
「いいもなにも、そのために来たんだから」

 お風呂に入ったあとは、マッサージを呼ぶこともできると言われて心が揺れる。
 でも、これはあくまで本当の新婚旅行ではないのだ。
 ご両親がプレゼントしてくれた旅行を、形式上、夫婦だから新婚旅行と銘打って来ただけ。
 無駄な浪費はできないと、私は首を振った。

「いえ、お風呂だけで十分です」
「……まぁ、そうだな。他の人間をここにいれるのも癪だし」

 彼が風呂の栓を落とし、蛇口をひねる。
 お湯が溜まるまでの間、私は寝室に戻ると、着替えの準備をすることにした。

「ベッドも広い……」

 ダブルベッドが、ぴったりと二つくっつけられた形で置かれている。
 彼の部屋に来た当初、一緒のベッドで眠ったことを思い出し、不意に頬が熱くなった。

 ――なに考えてるの、私……。

 自分の部屋にベッドが来てから、彼とは別々の部屋で眠っている。
 だから、同じ空間で彼と一緒に眠るのは久しぶりだ。
 これは眠れなくなりそうだと今から緊張してしまった。

 ――今日は、たくさんお酒を飲んでから寝よう……。

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