御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 記憶も意識もお酒で強制的に飛ばしてしまおうと決めて、着替えを持ち、先にお風呂をいただく。

 お湯加減もよく、浴槽から見える景色も最高で、ついつい長湯してしまった。

「……すみません。遅くなりました……」

 事前に用意されていた浴衣を身につけ、リビングへ戻る。
 蓮さんは、なにやら備え付けの新聞を読んでいたようで、私に気付くなり顔をあげた。

「おかえ……、は……?」
「な、なんでしょうか?」

 彼が私を見たまま固まる。
 髪を乾かさないまま出てきたのが良くなかったのだろうか。
 暑いので少し涼んでから……と思ったけれど、はしたなかったかもしれない。
 すぐに髪を乾かそうと戻る私の前に、彼は怖い顔で立ち塞がった。

「ど、どうしたんですか……?」
「前……」
「前?」
「しっかり閉じて」
「ひゃあ……!」

 ぎゅうっと苦しいぐらいに合わせをきつく締められる。
 彼はよしと頷くと、またソファーに戻っていった。

「…………?」

 そんなに首元が緩かっただろうか、と思いながら、自分の胸元を見つめる。
 決して豊満とは言えない、慎ましやかな膨らみを見て、きっと幻滅したのだろうなぁ……とため息をついた。

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