御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
父が会社をたたむと知ったときの私と、いまの私とでは生活が百八十度も違う。
お陰様で、父はそれまでに受注していた仕事を終えたあとは、蓮さんの会社経由で精密医療機器の製造にあたっているらしい。
ありがたいことに従業員たちもそのまま留まることに決めてくれたそうだ。
このまま順調に会社の経営がもとに戻れば、古くなった屋舎を建て替えることもできると父が話していた。
蓮さんからも設備投資の提案が来ているらしく、父としても前向きに検討するそうだ。
すべてがうまくいっている。
私にはメリットしかない結婚だ。契約とはいえ、好きな彼と一緒にいられるのだから。
だけど、それがいけなかった。蓋をした気持ちが、顔を出してしまう。
私は彼にとって、理想的な契約妻になれているのだろうか。
この前のパーティーでも、結果的に女性たちに目をつけられてしまったし、イヤリングも壊してしまった。
咄嗟に蓮さんには不注意で落としたと言ったけれど、結果的に壊れてしまったのだから理由なんて些末なことだろう。
これまでを振り返っても、彼にはメリットのない結婚のように思える。きっとこれからも、私は彼になにも与えられない。
そう思うとため息が出た。